切れ長の目、高く真っすぐな鼻筋、それはまるできりっと引き締まった凛々しい男性を表しているようだった。札幌市埋蔵文化センターのエントランスを入って直ぐ、その土偶は私たちを出迎えてくれた。
※ 札幌市埋蔵文化センターの目玉である「N30」で発見された土偶です。
7月22日(月)午後、「めだかの学校」の私たちとは別のグループが企画・運営する「大人の社会見学」の7月講座が札幌市埋蔵文化センターを会場に開催された。
埋蔵文化センターは、札幌中央図書館に併設されていてそれほど大きな施設ではない。展示室は一部屋しかなく小さな考古学博物館といった感じである。その小さな展示室で埋蔵文化センターの学芸員さんは2時間近くにわたって私たちに説明してくれたのだから大変なことだったろう。その学芸員さんのお話の中で印象に残ったことを記すことにする。
※ 私たちに説明してくれている学芸員の方です。
まず、札幌市に点在する遺跡の数であるが、その数は実に500を超える数だとのことだ。その遺跡には、「N30」とか、「K430」などという名称が付けられている。これは例えば「N30」というのは、「西区において30番目に発見された遺跡」という意味だそうだ。ちなみに「K430」は「北区において430番目に発見された遺跡」ということになる。遺跡の名称としては「三内丸山遺跡」とか「吉野ヶ里遺跡」というように地名が付けられるケースが多いのだが、これらはその地域の字名が付せられるそうだ。しかし、札幌市の場合だと「〇条△丁目」のようなことになるため、札幌市の場合は上記のような方法を取ったという。
※ 縄文後期と思われる(だったはずである)土器の数々です。
埋蔵文化センターの展示で最も目立つのが、館内に入ると直ぐに展示されている板状の土偶である。リード文で紹介したような印象的な表情をした土偶だが、市内のJR琴似駅近くのN30遺跡から発掘された縄文時代の晩期のものだそうだ。土偶は集落跡のお墓から見つかったという。
また、館内にはケースの中に大切に保管されていた木造の船の一部が展示されていた。遺跡の発掘で、木製品の発掘は大変難しいらしい。水中、あるいは水分を含んだ土中から引き揚げたとたんに木部の細胞内の水分が抜け、実物の数分の一に縮まってしまうらしい。したがって木製品の発掘の場合は水中にある時に特殊な溶剤を注入しながら引き上げねばならないとのことだった。そうして保存された木造船の舳先が展示されていた。
※ 木製の舟の舳先の部分が保存処理されて展示されていました。
といったように興味深い話を次から次へと紹介していただき、飽きることのない見学となった。2時間近く立ちっぱなしでお話を伺うことは、私たちの年代には辛いところもあったが、平易に興味が持てるようにお話された学芸員のおかげで楽しく有意義な見学会となった。