その時、ストランドビーストを見守っていた人たちからは思わず「オーッ!」という歓声が漏れた。高さ4m、幅9mの巨体が音もなく動き出したのだ。札幌芸術の森で現在開催中の「テオ・ヤンセン展」を覗いてみた。
初めその動画を見たとき、私は「映像に操作を加えた作り偽りの映像に違いない!」と思った。しかし、よくよく聞くとテオ・ヤンセンというオランダの芸術家がプラスチックパイプを組み合わせて風を動力にして動く“ストランドビースト”という“生物”を創造した芸術作品であることが分かった。
そのテオ・ヤンセンの作品展が札幌芸術の森で開催されると知って「これは本物を見なくては!」と思い、本日(7月30日)札幌芸術の森へ駆け付けた。作品展は題して「風を食べて動く生命体」となっていた。
私が入館したときは、ちょうど作品の動く様子が見られるデモンストレーションの時間だった。デモンストレーションに使われた作品は「アニマリス・プラウデンス・ヴェーラ」(2013年制作)と称する高さ4m、幅9m、奥行き6mという彼の作品の中でも大型の作品の一つだった。
※ デモンストレーションに使われた「アニマリス・プラウデンス・ヴェーラ」という作品です。
風で動くとは言っても美術館内では風が吹かない。そこで風の代わりに圧縮空気を使用してのデモンストレーションだった。スタッフが合図を送ると音もなく作品の各所が複雑な動きを見せながら前進した。その様子を見守った人たちからは思わず「オーッ!」という歓声が漏れた。動いたとはいっても狭い館内である。ほんの10m程度動いただけだったが確かに動くところを目撃できたことで満足だった。面白かったのは、作品は前進する機能しか有していなかった。そのため元の位置に戻すためには人力で戻していた。
※ 作品の後ろに見える人はこれから作品「アニマリス・オルディス」を押そうとしています。
デモンストレーションの後、改めて会場全体の作品を見て回った。その中の一つに「アニマリス・オルディス」(2006制作)という高さ2.2m、幅4m、奥行き2mの中型で、風力の代わりに人力で動かす体験をさせてくれる作品があった。私も体験させてもらったが、ごく小さな力で動かすことでがき、風の力で十分に動くことを実感として知ることができた。その後、館内に展示されているすべての作品を写真に撮りながら見て回った。
※ 高さ3m、幅5m、奥行き4.5mの「アニマリス・ウミナミ」(2017年制作)という作品です。
※ 高さ3m、幅7.5m、奥行き2.5mの「アニマリス・ペルシピエーレ・プリスム」(2006年制作)という作品です。
※ 高さ4m、幅12m、奥行き2.5mの「アニマリス・オムニア・セグンダ」(2018年制作)という作品です。
※ 美術館中庭に展示されていた高さ2.6m、幅15.5m、奥行き3.2mの「アニマリス・ベルシピーレ・
エクセルサス」(2006年制作)という作品です。
※ 作品に近接して撮りました。その複雑さがお分かりになると思います。ペットボトルは圧縮空気を貯めるところです。
※ 作品の特徴の一つは、足の部分の作りがほとんどがこの作品のように同じつくりになっていました。
テオ・ヤンセンが創る“ストランドビースト”は、複雑なつくりをしているが、材料としては、プラスチックチューブ、ペットボトル、結束バンド、ウレタンチューブといった誰もが手に入れることができる市販のものばかりである。それらを組み合わせ、複雑な動きを与えたのは、テオ・ヤンセンが芸術家であるとともに、物理学者であったことが大きいようだ。1990年代に古い形のコンピュータを駆使して計算し、その形を創っていったと展示は伝えていた。
※ 各部位に使われている部品です。
私にはその形、動きが複雑すぎて、「凄いなぁ…」と眺めるだけであるが、科学好きの子どもなどにとってはおおいに興味をくすぐられるのではないだろうか?この展覧会が若者や子どもたちに何かを与えるキッカケになるかもしれない。
なお、8月4日(日)午後、石狩浜「あそビーチ」において関連企画として、私が体験した「アニマリス・オルディス」という作品を砂浜で実際に風の力で動かすデモンモンストレーションがあると聞いている。私は残念ながら他の用件があって行くことができないが、興味のある方は出かけてみてはいかがだろうか?