街中の飲食街で深夜零時に開店し、朝まで営業する「めしや」にはさまざまな事情を抱えた客がひと時の癒しを求めて来店する。寡黙な主人が見守る中で様々な人生が交錯し、観ている者をホッコリとさせる映画である。
※ 映画タイトルの前にナンバーリングを付けた。この数字は私が2007年に札幌に転居後に観た映画の通算の映画の数である。「映画は最高のエンターテイメント」と考える私にとって、これからも有料・無料にかかわらずできるだけ多くの映画を観ていこうと思っている。
道民カレッジが所蔵するフィルムを定期的に鑑賞する「懐かしのフィルム上映会」の9月の上映会が9月18日(水)午後にあり参加した。
今回取り上げられた映画は、2015年に制作・公開された「深夜食堂」である。映画は安倍夜朗の人気コミックが原作ということだが、コミックに無縁の私にはまったく予備知識がないままの観賞だった。
映画では「ナポリタンスパゲッティ」、「麦とろ飯」、「カレーライス」といった庶民的なメニューが提供される中、その料理と共に三つの挿話から成ったオムニバス形式のような形でストーリーは進む。愛人を亡くしたばかりの女が、店で出会った年下の男と相思相愛の仲となるのだが…。無銭飲食をしたことを機に、住み込みで働くことになった若い女…。震災の被災地福島からボランティアで親切にされた女を追ってやってきた男…。
※ 無銭飲食の償いのために住み込みで働くみちる(多部未華子)を見守る主人(小林稔)
それぞれが事情を抱えながらも、それらのわけあり人たちを寡黙にやさしく受け止める「めしや」の主人。
都会の片隅ではいかにもありそうな挿話をユーモアも交えながら、観る者をホッコリとさせるような内容は観る者の心を鷲掴みにする。原作の良さ、キャスティングの素晴らしさがこの映画を成功に導いたように思う。小林稔、高岡早紀、柄本時生、多部未華子、余貴美子、筒井道隆、田中裕子、オダギリジョー、等々芸達者が並ぶキャスト人が素晴らしかった。特に若いに似ず多部未華子の自然体の演技が良かった。もちろん主演の小林稔の寡黙な食堂の主人役ははまり役だった。
※ 多彩で芸達者な助演陣がこの映画を支えていた。
観終わって「あゝ、良い映画を観たなぁ…」という思いに浸れた映画だった。
「懐かしのフィルム上映会」の10月編は、この映画の続編「続・深夜食堂」だという。観賞するのが今から楽しみである。