高校生の時。
古典の授業は、それはそれは退屈だった。
古典を受け持つY先生は、当時いくつだったのかはわからないが、どの角度からみても枯れ始めのオバさんで、高校生の私にとっては、絶対に恋愛対象には成り得ない印象の方であった。
古典の授業は、「ありをりはべりいまそかり」を「有森也実いまそかり」などと、茶化して覚えないとやっていられないくらい、眠たくなる苦痛の時間であった。
しかしながら、ある日。
そのY先生が、授業中に、私を覚醒させる発言をした。
「実は私、吉田拓郎が大好きなんです」と、誰も訊いていないのに、突然、語り始めたのだ。
「今度出た『FOREVER YOUNG』というアルバムは、とってもいいアルバムで、拓郎の魅力が詰まっています」・・・といったようなことを、古典の授業中に、せつせつと説いたのだ。
誰も、そんなコト訊いていないのに(笑)
当時の高校生にとっての流行は、チェッカーズとか菊池桃子さん、あるいは斉藤由貴さん辺りで、吉田拓郎氏を愛聴する者は、校内で私とN君くらいしか居なかったと思う。
Y先生とは、その数年後。
大学時代に、デパートの催事場で開催されていた拓郎のビデオコンサート会場で、一度だけ、偶然というか、必然というか、バッタリとお会いした。
それから30年以上の歳月が経過したが、Y先生は今もお元気なのだろうか。
そんなことを、ふと思ったバレンタインの夜である。