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顔を上げられなかった教師の心

2006年09月14日 | 雑記帳
 NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」は楽しみにしている番組である。

 田尻悟郎氏の回を見て、もちろんエンターテイメント性や学習の個別化の方法など
興味深く思ったが、それ以上に考えさせられたことがあった。

 田尻氏が、地元に帰り「やり直す」きっかけとなった事件?である。

 おそらくは鉄拳も辞さぬ熱血指導で、中学野球部を指導していた時
逆転不可能と思われた場面を、ひっくり返した野球部員たちが後日語ったこと。

「監督を見返してやりたくて、こんな所で負けてたまるかと頑張った」

 この言葉に、田尻氏は顔を上げられなかったという。
実際の雰囲気がどれほどのものだったか想像しにくいところもあるが
この言葉を、「もう、こんなことしちゃいかん」と受けとめた心に
田尻氏の目指すものがあるのだろう。

 大きな枠で見れば(傍観者的見方とも言えなくもないが)
ぎりぎりの場面を逆転するほどの気力や技術を植えつけたのは、厳しい指導であり
有無を言わせぬ練習は「世の中には理不尽なことがある」と言ったことを教えたかもしれない。

 しかし、そこにやはり心が通っていなければ…と田尻氏は考えたか。

 やり直しのために工夫した様々なことは、心を通わせるための方法だった。
 「エンターテイメント」「個別指導」「機を待つ」…

 つまりは、「相手を見る」ということにつきる。

 野球部員の述懐に顔を上げられなかったのは、
今まで見ていなかった相手を、今さら見ることができなかった、ということである。