すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

みんな心にナイフをしのばせている

2006年12月08日 | 読書
 仕事をしている合間に、
「ああ、あの本の続きを読みたい」という衝動にかられたのは
久しぶりである。

 雑誌の書評を以前見かけ、興味を持ったことは確かだが
ネットで注文するほどでもなかった。
 しかし、書店でその表紙を見かけたとき
またぐっと惹かれ、ためらわず購入した。

『心にナイフをしのばせて』(奥野修司著 文藝春秋)

 内容はすべて本の帯の言葉が示している。

28年前の「酒鬼薔薇」事件
高1の息子を無残に殺された
母は地獄を生き、同級生の
犯人は弁護士として
社会復帰をしていた!


 「少年法」の抱える矛盾
 こうした事件に対して、「国家」は何をなすべきかというハードの面と
 事件を背負う家族らの心の闇というソフトの面が入り混じり
久々にぐいぐいひきつけられたノンフィクションであった。

 被害者の妹のモノローグという形が大半であるが
(そこにもちろん著者の構成の妙があるのだが)
被害者家族のたどった足跡がリアルに描き出され、心に迫ってくる。

 当事者の苦しみはわかりようがないことだけれど
傍観者はそうした言葉とは裏腹に、自分勝手なことを考えて
当事者たちを追い詰めることがよくあるものだと思う。
 これは、何も悲惨な事件でなくても、あてはまるではないか。
 
 妹のモノローグ部分で語られた次の言葉は、ごく平凡だけれど痛々しい。

 常識的な行動に、果たして人間の気持ちが込められているかといえば、そうでないことのほうが多い