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そして気がつけば、四度目の…

2012年01月03日 | 読書
 買ってはいたが広げずじまいの本を読むことから、新年読書は始まった。

 『14歳の君へ』(池田晶子 毎日新聞社)

 半分が「毎日中学生新聞」に連載された文章だという。彼女の死のわずか三ヶ月前の発刊だった。
 中学生向けの文章とはされているが、さすがに十分読み応えがある。

 例えば「個性」という章だ。

 「自ら」ということと「自ずから」ということは違うことだ。(中略)君は、自ずから、そうなる人になればいい。自らなろうとなんかしなくていい。そしたら、君は、必ず個性的な人になる。

 かつて流行った「自分探し」という言葉のくだらなさや、個性伸長の押し付けを見事に暴きだしてみせる。

 例えば「言葉」という章だ。

 人間が言葉を支配しているのではなく、言葉が人間を支配しているということだ。

 言葉を知るにつれて人間が陥りやすく、実は本質的に問いかけ続けなければならない言葉の道具観について鋭い警告をしている。

 「自然」の章で語られていることは、昨年の震災に向き合う私たち人間を黙らせてしまうほどの力がある。

 このところ世界中で、地震や津波や台風の自然災害が相次いでいる。時々襲ってくるあれらによって、人間は、自然は人間の意志を超えているということを思い出すことになる。(中略)あれらの自然の出来事と共に生きて、そして死ぬことが、本当に「自然と生きる」「自然に生きる」ということではないだろうか。

 「友愛」から始まって、「人生」までの16章。平易な言葉で書かれているように見えて、その論理や想像はていねいに読み込まないと、今の子どもたちには呑み込むに難しいかもしれない。

 そこに付き合えるだけの「学力」を14歳までには身につけさせたいものだと、素直に思う。
 そのなかみは、相応の言語の知識と他者の考えにまともに向き合おうとする心と言っていいだろう。
 責任の一端いや多くの部分は、学校教員がもつという自覚が必要だ。

 「あとがき」は「保護者ならびに先生方へ」と記されていて、こんな言葉で結ばれている。

 受験の役には立ちませんが、人生の役には必ず立ちます。
 皆様への信頼とともに。


 私には、この著をもとに指導はできないかもしれないが、自分の凝り固まった頭と体を刺激するには十分役立った書だった。

 そして気がつけば、四度目の14歳になる年。
 齢相応でない読書なのかもしれないが、裏返せばこんなふうに学べるということで、ある意味幸せな人間ということですナ。