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国とかかわる自分を見つめながら

2013年01月17日 | 読書
 『日本の選択 あなたはどちらを選びますか?』(池上彰 角川oneテーマ21)

 昨年12月の総選挙前に発刊された新書である。
 消費税から社会保障,教育問題,原発……全部で10章立て。いわゆる日本の論点とされていることを,池上さんらしくわかりやすく示している。

 ここに挙げられている問題は様々な面で結びつきが強い,という当然のことを再認識したし,そういうスタンスを持って自分の生活を見つめたり,投票したりすることを考えさせられた。

 端的にいえるのは,「原発の今後」と「がれきの広域処理」の問題だ。
 原発ゼロを目指すことに明確に賛同するならば,広域処理の受け入れを拒むことは矛盾点を抱えると思う。
 科学的な判断はどうか(おそらくそこでも論は分かれるのだろう),場所選定に関わる政治的な誘導の有無はないか,等々予想されることはあるのだけれど,著者が書いたこの点には深く納得する。

 被災地のがれきさえ受け入れられない国民に,五十基もの原発をゼロにすることが可能とはとても思えません。

 「どちらを選びますか?」と問われて決めるべきは,個別の問題ではなく,そこに関わる選択のつながりをしっかり見据え,自分はどこへ向かおうとしているかを考えることだ。



 『下村博文の教育立国論』(下村博文 河出書房新社)

 本文の中には「教育立国」という言葉は見つけられなかった。
 しかしこの内容からすると,題名としてはふさわしい気がする。教育改革をするために議員となり,様々な提案をし,「政治の最大の役割」と言い切る著者である。

 自らの境遇を糧にしながら,教育格差の是正を訴える点には共鳴するものがある。教育特区を手始めに「新しい学校」の設立を計画立てている点も納得できた。

 しかし,である。
 政治家が「○○立国」を言い出し,政策として実現を目指して動いたときに,それにまとわり,絡みつく世間の目や声を考えたとき,「教育」は言い出すにふさわしいのか,と根本的な疑問を感じた。

 画一的な教育からの脱皮を目指して,多くの制度改善や抜本的な改革に論が割かれている。そのいちいちについて判断することは私には難しいし,現状と比較するには想像力がいる。

 ただ読んでいて,子どもの育つ社会や地域環境を寸断し,変質させてきた責任の中心は政治ではなかったかという思いが浮かび,その点をあまり省みられていないことに,やはり危機感を持つ。
 自分も含めてそこに誘導された「国民」は,著者が思うほど成熟していないと思う。

 文科省大臣として腕を奮うことになるだろう。
 この本の中身と照らし合わせて、注視したい。