すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

面白い、の話をしようか

2020年06月06日 | 読書
 では小噺を一つ…「面白い話」をします。むかしむかし、ある所に体が真っ白な犬がおったそうな…、尾も白い犬だったそうな。というのは定番中の定番で、駄洒落の面白さを伝えている。「面白い」という語は一日一回ぐらい言っていると思うが、様々な場面があるだろう。その全体像に正面から取り組んだ面白い本だ。


 『面白いとは何か?面白く生きるには?】
  (森博嗣 ワニブックスPLUS新書)



 そもそもこの著者が面白い。大学で教職につきながら作家になった経歴の持ち主は他にもいようが、とにかく自分の趣味である模型作りの環境に専念するための資金作りとして小説を書き始めた人だ。その書き方もベストセラーを狙うのではなく、そこそこ売れる本を連発していく手法を取る。ぶれない人生観がある。


 ドラマによく出てくるキャラクター、例えば「家政婦のミタ」「ドクターX」「女王の教室」の主人公(何故か全員女性)と重なる。風変りと片付けられる人種とも言えるが、その人なりの「面白さ」の追究が個性的ゆえにそう見える。著者曰く「『面白さ』を知ること、生み出すことが、すなわち『生きる』ことの価値だ」。



 この本を面白いと感じた訳は、「面白い」という一般的な生活語彙に焦点をあてて分析しているからだ。だから言葉への興味が強いという自己分析は一層濃くなった。たぶんそこに「面白く生きる」コツのようなものがある。それゆえ子育てや教育でも何が好きであるかが決定的で、その点だけはないがしろにできない。


 この語を改めて国語辞典で調べると、たいてい四つの意味区分を持つ。「楽しい・愉快」「興味をひく」「滑稽・おかしい」「満足・好ましい」。語源をたどると「面」は目の前、「白」は明るくなる感じであり、美しい景色をたとえている。やはり面白いこそ人生の価値だと再強調したくなるが、意外と複雑な一面を持つ。

・・・つづく