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ドックで読書2021

2021年06月05日 | 読書
 「ドックで読書」と題付けたら、以前も同じように書いたはず、と検索してみた。9年前だ。なんと3日続けての読書メモだった。現職終盤の選書傾向がわかる。

 ドックで読書 その1
 ドックで読書 その2
 ドックで読書 最後

 もちろん、今は今なりで…。


『知の仕事術』(池澤夏樹 インターナショナル新書)

 ドック入りする前に開き始めた一冊。この国屈指の「知の巨人」と呼んでもいい著者が、自らの「知のノウハウ」を公開した。「新聞の活用」に始まり、「デジタル時代のツールとガジェット」に至るまで、今まである意味「企業秘密」にしてきた「製造過程」を明らかにした。この齢では到底真似しきれないが、どこまでも貪欲に「知」へ向かう姿勢は刺激的だ。「読書はストックではなくフロー」だと言い切れる覚悟は、「知」に対する尊厳の証しにも思える。問い続けるのは、何のために…だけなのである。


『きれいの手口』(内館牧子 潮新書)

 ひっかかりを持たせた書名「きれい手口」ではなく「きれいになる手口」もしくは「きれいでいるための手口」ということだろう。副題が「秋田美人と京美人の『美薬』」で、雑誌の連載だったらしい。しかし25項目をこのテーマではきつくないか。著者独特の友人ネタや読書ネタを駆使して組み立てている印象で、まあ誌面で軽く読むには適当という程度か。ただ、京都と秋田の女性の気質を比べた語が紹介されていて興味深い。京都は有名な「イケズ」。そして我が秋田は「ハラツエ」だ。これは地元でないと理解できないニュアンスを持つ。


『赤ずきん』他、(フェリシモ出版)



 この小型本は、絵本と言えるのだろうが、読者対象をどこに置いたのか、非常に興味深かった。通常なら子ども相手に、持ち運びできるサイズの絵本と思うが、中味が…。「赤ずきん」は童話のそれとは違うし、「ねずみじょうど」も展開は似ているが、ちょっとグロテスク。「ふたりでひとり」は上方落語で、これは原作に近いような感じもする。しかし「赤いくつ」も「王子さまの~」もかなり大人向けのように感じる。病院の「患者文庫」に並んでいたが、童話の棚に紛れ込ませたのは、どんな感覚の持ち主か。ちょっとホラーでもある。