今回は、令和3年-健保法問9-D「傷病手当金の支給要件」です。
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傷病手当金の支給要件に係る療養は、一般の被保険者の場合、保険医から療養
の給付を受けることを要件としており、自費診療による療養は該当しない。
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「傷病手当金の支給要件」に関する問題です。
次の問題をみてください。
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【 H23‐9‐A 】
傷病手当金は、療養のため労務に服することができないときに支給されるが、
その場合の療養は、健康保険で診療を受けることができる範囲内の療養であれば、
保険給付として受ける療養に限らず、自費診療で受けた療養、自宅での療養や
病後の静養についても該当し、傷病手当金は支給される。
【 H25‐4‐B 】
傷病手当金は、療養のために労務に服することができなかった場合に支給
するもので、その療養は必ずしも保険医の診療を受けた場合のみとは限ら
ない。
【 H29‐8‐A 】
傷病手当金は被保険者が療養のため労務に服することができないときに支給
されるが、この療養については、療養の給付に係る保険医の意見書を必要と
するため、自費診療で療養を受けた場合は、傷病手当金が支給されない。
【 H30‐9‐D 】
傷病手当金は、療養のために労務に服することができなかった場合に支給
するものであるが、その療養は、医師の診療を受けた場合に限られ、歯科
医師による診療を受けた場合は支給対象とならない。
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傷病手当金は、被保険者(任意継続被保険者を除きます)が療養のため労務に
服することができないときに支給されます。
これらの問題は、この「療養のため」というのはどういうものなのかを論点に
しています。
被保険者が疾病にかかり、又は負傷し、療養する場合、被保険者の状況により
その方法は様々です。
そのため、傷病手当金の支給要件として何らかのものに限定してしまうと、支給
すべきと考えられる状況にもかかわらず、支給を受けられないということが起き
得てしまいます。
そこで、ここでいう「療養のため」とは、保険給付として受ける療養には限定され
ません。
つまり、保険診療は受けず、「自費診療による療養」や「自宅での療養」の場合も、
労務不能であることについて証明があるのであれば、傷病手当金の支給対象となり
得ます。
ですので、【 H23‐9‐A 】と【 H25‐4‐B 】は正しいですが、
「自費診療による療養は該当しない」とある【 R3‐9‐D 】、
「自費診療で療養を受けた場合は、傷病手当金が支給されない」とある
【 H29‐8‐A 】は、誤りです。
また、支給対象となる療養は診療科を問わないので、医師の診療を受けた場合に
限られず、歯科医師による診療を受けた場合も支給対象となります。
ということで、【 H30‐9‐D 】も誤りです。
それと、これらの問題では論点となっていませんが、美容整形手術のように
療養の給付等の対象とならないものについて、被保険者が自費で手術を受け、
そのために労務不能となったときなどは、傷病手当金の支給対象とはならない
ので、この点も知っておきましょう。