百醜千拙草

何とかやっています

研究広報

2011-09-23 | Weblog

学会から帰ってきました。友人や知り合いに会ったりするのは楽しいのですけど、肝心の学会の中身はパッとしませんでした。不景気で、参加者数の減少、出展企業数の減少などによる学会や研究活動の沈滞が主な理由かと思います。寂しい話です。

会期中の特別シンポジウムでは、どのようにして、科学研究活動を宣伝し、一般人や議員の人々のその価値や成果を理解してもらうか、という「研究広報」のセッションもありました。早い話が、大学や研究機関の研究の大部分が税金ベースの政府資金に頼っているという現状があるので、税金の使い道を決める人にできるだけアピールして研究資金への分配を増やす努力を積極的にしないと、研究者や大学関係者は喰い詰めますよ、ということです。

アメリカ国防省(ペンタゴン)が存在している本当の目的は国防そのものではなく、国防にからむ研究や企業へ税金を回すためであると先のチョムスキーの本に書いてありました。国防予算を削るとハイテク研究が打撃を受けます。同様にアメリカの医学生物研究の多くに金を出しているNIHの予算が削られると、当然ながら大学や研究施設の生物系研究が打撃を受け、大学院教育などが成り立たなくなるでしょう。国防に関する重要性を一般国民にアピールするのは比較的やさしいでしょうが、大学の基礎研究のアピールはそれよりは困難かと思います。テクノロジー開発に主眼を置く国防関連の研究と、生物学研究はその質からしてかなり違います。また国防だとテロなどで国防が危機になればなるほど、もっと国防費を増やそうというロジックになりますが、人の健康に関しては、こんなに金をつぎ込んでるのになかなか病気がなくならないのなら、役に立たない研究などやめてしまえ、という方向に行きかねません。その辺りからして基礎系生物学研究は立場が弱いです。

引退した議員の人がそのシンポジウムで講演の一つを行いましたが、もっと積極的に議員にコンタクトをとって、研究の重要性をわかってもらうべきだと言っていました。具体的には議員を研究室に招待するとか、マメに手紙を書くとか、その議員の科学アドバイザーになるとかを提案していました。そんなヒマがあったら実験する、という研究者の人の意見もわからないではないですけど、こういう「社会活動」に参加する人がいないと、研究者の社会的立場はやはりじりじりと悪くなっていってしまうと思います。社会活動は継続的に行い、そのノウハウを蓄積できるようなシステムをつくることが大切です。少数の活動家にまかせて自分は何もしないというのではいけません。というのは、多くの使命感に燃える活動家が結局、燃え尽きてしまいます。それは、彼らの活動がより広い人々からなるシステムに支えられていないからです。弱い立場である一般民衆は団結すること、継続的に活動を行えるような恒久的な場をつくることが必要だと思います。誰もが少ない負担で気軽に参加でき、少数の人々だけに頼らないような組織がシステマティックに運動を続けることが重要だと思います。アメリカ科学会ではFASEBとかAAASとかの広い科学コミュニティーなどがその役割を果たしていますが、それでも一般研究者の社会への関り方に関する意識は低いと思います。やはり、まずは一般民衆(研究者)個人の意識の向上が不可欠です。欲しいときだけ「金くれ」とせがんでおいて、もらったら関係ない、という態度はいけません。日頃から、研究活動を社会にどういう形で還元するかという意識はもっておいた方がよいと私は思います。

ところで、国連で野田首相は原発輸出継続を表明したそうですね。やはりこの人は、原発利権連中の言いなり、ただのブx型の操り人形だったようです。自分のところで、あれだけ大きな事故を起こしておいて、日本のみならず世界に迷惑をかけた上、半年たってもその後始末さえできていない状況で、「原発を輸出する」などとよく恥ずかしげもなく言えたものです。ニュース記事には、他の国の反応が書かれていませんが、おそらく、大ブーイングを浴びたことでしょう。私もふざけるのもいい加減にしろ、と思います。喩えてみれば、酒酔い運転して人身事故を起こした教習所の教官が、これからも安全運転に気をつけて運転を指導したい、と言っているようなものでしょう。直ちに免許取り消しするのが筋です。日本がすべきことは、原発を直ちに停止して深く反省することです。(そんなあたり前のことができないのですね)前の空きカンもヒドかったですが、この人もすでにダメなようです。

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