百醜千拙草

何とかやっています

背筋が凍るフクシマ

2013-09-06 | Weblog
「内田樹の研究室」の「五輪招致について」とエントリーを読みました。オリンピック招致運動に反対している人は多いと思います。私もその一人です。内田さんも含めて、反対している人の意見を見る限り、非常に大きな理由の一つは、やはり福島原発事故です。

廃棄物の処理方法がなく放射性廃棄物を溜め込むしかない原発で発電し続ける国を「トイレ(下水)のないマンション」とよく喩えられます。秀逸だと思ったのは、文芸評論家 齋藤美奈子さんが東京新聞のコラムに載せた、「いまの日本の状況でオリンピックを招致しようとすることは、トイレが壊れて排泄物が溢れ出し、(住むことさえできない所がある)部屋に人を呼んでパーティーをしようとする」ようなものだ、という内容の喩え話でした。
私だったら、自分のウチのトイレが壊れて汚物が溢れているような状態で、人を呼ぼうとは思いません。トイレを直すのが先だと思います。

その壊れたトイレが直るのか、直るとしたらいつ直るのか、それが問題なのですが、あいにく、私には、直る見込みはなく、むしろもっと悪くなるというようにしか見えません。雁屋哲さんが原発敷地内を見学してその様子を最近、アップされていますので、是非、ご一読ください。以下、部分的に抜き書き。

福島第一原発の汚染水漏れ
それでも、実際にこの目で原発敷地内を見ることの意義は大きかった。
一番心を打たれたのは、大勢の人々が原発が安全にこのまま収まるために力を尽くしていることだ。
東電の職員の方たちを始め、作業員の方たちが、私から見れば献身的と思える仕事をされていることに、深い感銘を受けた。
ただ有り難いとしか、原発で働いている方たちに言う言葉はない。

4月5日に原発敷地内入って驚いたのは、そのタンクの数である。
以前、新聞の写真や、テレビの映像などで見た情景とは大違い。
タンクが敷地内にびっしりと言って良いほど立ち並んでいる。

今回タンクが水漏れを起こしたのは地盤沈下による物だという。
最初に設置した場所で地盤沈下が起きたために解体・移設し、使い回した物で、地盤沈下によって鋼材がゆがみ、接合部から漏洩した可能性がある、と東電は認めている。
原発が簡単に地盤沈下するようなもろい地面の上に建っていると言うことがそもそも根底から間違っている。

やわな地盤の上にやわな作りのタンク。
ちょっと大きな地震が福島原発を襲ったら、あんなやわなタンクはひとたまりもない。倒壊するか、倒壊しないまでも、鋼板がずれて中の汚染水は外にあふれ出るだろう。毎日増え続けて8月末で1000基あると言うタンクの中の汚染水が原発敷地内にあふれ出たら、これは一巻の終わりだ。
だれも手も足も出せない状況になる。
高濃度の汚染水につかった敷地には人が立ち入れない。
人が立ち入れなければ、現在続けている原子炉の冷却作業も続けられない。
冷却を続けなかったら原子炉はどうなるか。
メルトダウンした燃料も問題だが、例えば4号機の使用済み燃料はどうなるか。
久木田豊・原子力安全委員会委員長代理(2011年3月当時)は「燃料が溶けて、さらに火災が起こってプールの底が抜けてバラバラっと燃料棒が落ちていく。それが最悪」と言っている。
そうなると、ますます原発敷地内に入ることは難しくなるどころか、放射性物質は首都圏まで及ぶという。
東京にも人は住めなくなる。私の家のある神奈川県も駄目だ。
悪いことは次々に重なる。
さらに・・・・・。
この先話を進めていくと、途方もないことになって心も凍えてくるからこの辺で止めるが、実は途方もないことが何時起こっても不思議ではない状況なのだ。

福島第一原発に話を戻すと、私は第一原発を見て回って、「何もかも応急処置だ」と思った。

今度の汚染水漏れの件から見て、東電はもう自分で物事を解決する能力も気力もないのではないか、と思う。
私が原発に入った直後、地面に掘った汚染水をためる地下貯水槽7基が水漏れしていることが分かって、その中の汚染水をタンクに移した。
その地下貯水槽なる物はどんな物だったか。
地面に穴を掘ってその穴の表面をビニール・シートで覆ってそこに汚染水をためると言う物だった。
ところが、そこに使われたビニール・シートが一般用に使われている物で、放射線に対して特別に対策を施した物ではなく、しかも、シートとシートの継ぎ目から水が漏れた。
それを聞いて、私は「東電にまかせておいては駄目だ」と思った。
たまる一方の汚染水には、私は以前から危機感を抱いていた。
それが現実の物になってしまった。
これから先、福島はいや日本はどうなるのか。


背筋が凍る、というしかありません。この状況から考えられることは、福島原発に溜め込んである放射性物質が全て臨界を起こしてメルトダウンするのは時間の問題だということです。それも数年の猶予があるかないかというレベルでしょう。つまり、廃炉にするために、核燃料の冷却を続けながら、使用済み核燃料を取り出さねばならないわけですが、冷却の水と地下水のために、現在33万トンという高レベル汚染水が敷地内の1000余り林立するヤワなタンクに溜められており、それが毎日、増え続ける一方で、日々、300トン余りの汚染水が漏れ出しており、汚染水の処理だけに謀殺されて、肝心の作業は一歩も進んでいない、という状況にあるわけです。汚染水の問題は、作業を困難にするだけでなく、にわか作りのタンクが地震などで倒壊すれば、広範な敷地の汚染のため、人間が立ち入って作業することが大変困難になり、事実上、福島から人間が撤退せざるを得なくなる可能性が高くなるということを意味していると思います。とすると、福島にある大量の核燃料の核反応は止めることができなくなり、東京を含めた北日本は少なくとも、人が住むことができるような環境でなくなるということです。

漏れ出てくる現場の様子をネットで探る限り、どうも、現場はすでに白旗状態のようです。現場の作業員は五次、六次の下請け、その作業員に指示を出しているのも、それよりちょっと上の下請けで、東電職員は遠くから見ているだけ、という話。現在は、目の前に次から次へとわき起こる二次的な問題に対処することさえ難しく、事故収束に向けての作業にとりかかる見通しも全くない、という状態のようで、遠からず撤退せざるを得なくなるのはどうも間違いないような感じです。

福島から撤退するということが決定されたら、数日も猶予はないかも知れません。その間にできるだけ遠くに逃げなければなりません。この最悪の状況は、いつ何時でも起こりえると思います。ちょっとした地震だけでも、そうなる可能性が高い、と雁屋さんのレポートを読んで思いました。つまり、次のオリンピックまでには、東京は人間が住めなくなっている場所になっている可能性はかなり高いということです。

東北大震災の際に、津波が迫っているのが分かっていながら、渋滞で車の中で大人しく待っていて、命を落とされた人々が多かったという話を聞きました。私、今の福島原発の状況は、それに近いものがあると思います。福島の状況は一瞬で北日本を壊滅させるほどの危険にあります。いつでも逃げることができるように準備しておくべきでしょう。
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