百醜千拙草

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鼻血のトレンド

2014-05-09 | Weblog
私は、雁屋哲さんのブログを折々に見ております。その口調から、非常にストレートで正直な方であろうと思っています。また、信念に沿って発言することを恐れない人であると思います。その点で、私を含む世の中の大多数の人間が、基本的に事なかれ主義で、第三者の立場からヘラヘラと物事を批評するのと違い、責任を持って信念に従って発言する真の言論人であると尊敬しております。

その雁屋さんが二年に渡る取材の後に始まった「美味しんぼ、福島の真実編」に、非難の嵐が殺到しているというニュースを聞きました。私は、あいにく読んでいないのですが、取材の間に、福島で雁屋さん自身が突然の鼻血や倦怠感を感じた経験、取材で聞いた医師や前村長の人(漫画には実名で登場)から聞いた取材経験をもとに書いたものらしいですが、「風評被害だ」とか「根拠のないことを書くな」とかいう相当攻撃的なメッセージが編集部に寄せられているとのことでした。

しかし、鼻血に関しては、雁屋さんの取材の範囲では少なくとも根拠はあったわけで、その取材事実を漫画に描いてあるという点で、私は別段、非難を受けるようなことではないと思います。

福島事故以来、関東、東北で突然、鼻血や咳が出るようになったという話はよく聞きます。吸い込んだ放射性物質が鼻粘膜や肺上皮を損傷するのだという理由らしいです。これは原爆被曝者が骨髄不全になって血小板減少を起こしての出血傾向からの鼻血とはメカニズムが違います。

試しにグーグルトレンドで「鼻血」の検索頻度を調べてみると、原発事故の翌月の2011年4月には、それまで何年も同程度の安定した検索頻度が続いていたのが、急激に3倍に上昇してピークを作っています。そして、その後も事故前の 2-4倍の頻度を維持し続けています。この時期になぜ、急に普段の三倍(平均して)もの人々がグーグルで「鼻血」を検索し出したのでしょう?この検索を地域に分割してみると、普段、検索頻度の少ないところではこのピークはもっとシャープに観察されます。2011年の4月に大抵の地域ではっきりとしたピークがあります。この年の時期に人々の鼻血への興味が急激に上昇したということになります。検索語を「鼻血の原因」としてみると、もっと興味深いです。2010年の8月になぜかピークがありますが、それまではゼロ、そして2011年4月に急上昇してからその検索頻度のレベルが持続しています。つまり、原発事故後に急激に人々の「鼻血の原因」に対する関心が増えたということです。2011年4月のこの「鼻血」検索頻度の急激な上昇は、中国では認められません。日本国内だけの現象です。英語で検索してみても同じことです。日本国内だけで、2011年4月に急激に人々の鼻血への関心が上昇しています。

福島の原発事後が人類史上、最悪の事故であるという事実と、チェルノブイリでの未だに続く健康被害のことを知っておれば、普通は、福島の現状が深刻なものであることは誰でも「理性」では理解できるでしょう。事実、放射線量が高過ぎて、住民が住めない地域が福島にはあります。深刻な放射能汚染の証拠があり、農作物は出荷できず、海産物は漁そのものが規制されているという状況ですから、漫画で鼻血が出たと描いてあるぐらいで「風評被害」という批判は的はずれもいいところだろうと私は思います。

この漫画に苦情を書いている人のコメントをネットでパラパラ見てみました。大変、感情的かつ攻撃的なものが多いです。鼻血の記載に反対する納得できるような理由を上げてあるものは一つもありません。すなわち、これらのコメントは、コメントを書いた人が鼻血に対する意見が雁屋さんと違うことを表明したいのではなく、単に相手を黙らせたいのです。その理由は、利害関係があるからでしょう。(そうでなければ、「自分の方がエラい、お前はバカだ」と決めつけてかろうじて自尊心を慰めているネットによくいる寂しい人々でしょう)。

言論の自由は民主主義の根幹ですから、たとえそれが他人の言論を封鎖するための攻撃であったとしても、それを発言する自由は認められなければなりません。しかし、言論の自由の意味するところをわれわれはもっと深く考えておくべきだろうと思います。そうであれば、漫画の表現に対して、攻撃的で感情的苦情を言う人間も減ると思うのですけど。実在人物がからんだ週刊誌のデッチ上げ記事を真に受ける人は余りいないのに、本来、フィクションの漫画の話で風評被害だ、というのはヘンな話です。

しかし、いずれにせよ、そういう攻撃性のある意見が多く寄せられるということは、金で雇われた工作員であれ、自分の頭で考えられない洗脳人間であれ、日本の原発ムラがまだまだ力を持っていて、カネのためには日本の将来など知ったことか、と思っている連中が多いということを示していると思います。なにしろ、普通の頭があれば、どうやっても割に合わないとしか判断できない原発を推進し、福島の事故収束は後回しにしてもオリンピックでハリボテの復興ムードを盛り上げ、クサいものには蓋をしてしまえ、という底抜けにxxxの弱いのが首相をやっている国ですからね。
根が深いです。
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