和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

目をそらさないようにする。

2011-10-23 | 短文紹介
「いい話というのは少年・少女には威力を発揮するのではないだろうか。いな、少年・少女でなくてもいい話は成人にも何かの影響を与えるに違いない。考えてみると私の今日あるのも本を読んで、そこから大切な教訓を得たためである。」

これは、渡部昇一著「『修養』のすすめ」(到知出版社)の、まえがきにある言葉。ちなみに、この本は連続講演を一冊にまとめたようです。

さてっと、宮崎駿著「本へのとびら ― 岩波少年文庫を語る」(岩波新書)が、この10月20日に出ておりました。最初の第一章が、宮崎駿選の「岩波少年文庫の50冊」(私は遅まきながら、はじめて見ました)。この新書の結構は、次の第二章。最後には「3月11日のあとに」という文が読めるのも、さすが10月の新刊といった手ごたえ。

ここでは、「借りぐらしのアリエッティ」に触れて語られた箇所を引用。

「原作、『床下の小人たち』・・この本はまず、何といっても、『アリエッティ』という名前と、小人のほうが滅びていく種族なんだと残酷に男の子が言うところがあるでしょう・・そこが、ひじょうに新鮮でした。」(p100~101)

「これは生涯映画化できないだろうと思っていたものが、今ならこれは映画になるかもしれない、という時期が来ることもあるんですね。何十年に一度きりのチャンスが来るんです。『床下の小人たち』を取り上げたのは、今や大人たち、いや人間たちが、まるで世界に対して無力な、小人のような気分になっていると思ったからです。」(p103)

宮崎駿のこの映画は見ていないのに、うんうんとうなずいてしまいます。
もうすこしつづけると

「つまり、みんなが小人になっちゃったんですよ。世界にたいして無力になって、一円でも安いほうがいい、なんていうつまんないことのために右往左往している。見ている範囲もほんとうに狭くなってきた。歴史的視野とか人間にあるべき姿とかの大きな主題が、健康とか年金の話にすりかえられてしまいました。・・」(p104)

「サブカルチャーというのはさらにサブカルチャーを生むんです。そして二次的なものを生むときに、二分の一になり、さらに四分の一、八分の一になり、と、どんどん薄まっていく。それが今です。そう思います。」(p131)


さてっと、「3月11日のあとに」はp147からはじまっております。
そこからも引用。

「今ファンタジーをつくってはいけない。」(p157)
「風が吹き始めた時代の入り口で・・・21世紀が本当に幕をあけたんですね。僕はそれから目をそらさないようにするので、せいいっぱいです。」(p158)
コメント
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