和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

ものを書く目処(めど)。

2018-12-22 | 道しるべ
月刊Hanada2019年2月号。
ここに平川祐弘氏が連載をしており、今号は9回目。
連載中読んでいなかったのですが、
この回は、目を通す(笑)。

気になったので引用。

「私には、ものを書くについてある目処(めど)があった。
それは学術上の文章が、自分の日記や手紙の文章ほど
生き生きしないようなら、書くに価しない、という思いで、
その気持は学生時代も、教授時代も、退官後も変わらない。」
(p317)

こうして、ご自身の学士論文に触れてゆくのでした。

「大学後期の私は立原道造を好んだ。
私の場合、詩よりも日記や手紙を愛した。
・・それでフランス青年詩人ゲランの日記や手紙を
とりあげて学士論文とすることにした。
オリジナルなことが特に言える訳もなく、
フランス語が達意なはずもなく、
書きおえてまことに不満だった。」

その、モリス・ド・ゲランが、
この、2月号のテーマでした。

こんな引用があります。

「彼の文学的趣味、その詩法について
その一端を披露すれば姉に次のように書いた。

 自分で自分にふさわしい文章を書きなさい。
 詩人は誰でもその心の奥に書かれた詩法
 というものがある筈です。
 それ以外に詩なんてあるもんですか。
 何でもない小さな事まで自然をよく観察して、
 考えが閃いたら、その流れのままに
 筆を走らせる、それ以外に手はないですよ。」
(p324)

平川氏の文の最後は
リルケがゲランに掲げた二行の言葉
引用で終っておりました。
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ねずみ男と、新約聖書のイエス。

2018-12-22 | 短文紹介
新刊を購入しても、読まずにいる。
それで、新刊にはなるべく手を出さないようにしてる。
買わないでいると、そのうちきれいに忘れる。
忘れているのですが、検索でひっかかり、
佐藤優著「読書の技法」(東洋経済)を、
古本で安くなっていたので、購入する。

パラリとめくると、漫画についての指摘がある。
うん。気になるので、引用しておきます。
水木しげる『ゲゲゲの鬼太郎」(全7冊、ちくま文庫)
についての全文。

「ビジネスパーソンがいまこの漫画を読むなら、
『ねずみ男』に注目して読んでみることをすすめる。
この漫画においてねずみ男は、
基本的にエゴイスティックな存在として描かれている。
自分の個別利害しか考えず、強欲である。
『世のため、人のため』という大義名分や
星飛雄馬が持っているような絶対的正義に対する関心もない。
あくまで『利益追求』が第一にある。
しかしながら、鬼太郎や目玉おやじの『存在否定』はしていない。
友情や人情もそこそこ大切にし、
それなりのコミュニケーションを尊重するので、
周囲との関係は決して破綻することはない。
よって共同体からつまはじきにされることはない。
極端な言い方をすれば、
星飛雄馬がウサマ・ビンラディンとすると、
ねずみ男は関係性を非常に重視する新約聖書に書かれた
イエスを彷彿させる。
エゴイスティックで自分の欲望を追求するが、
他者とのコミュニケーションも大切にし
周囲ともうまく協調していく。
高度経済成長以後の21世紀型の生き方として、
ビジネスパーソンがねずみ男から学ぶべき点は多い。」
(p217~218)

う~ん。
新約聖書のイエスと、ねずみ男を結びつけるなんて
佐藤優氏以外に誰が思いつくんだろう?


それにしても、
「関係性を非常に重視する新約聖書に書かれたイエス」
この指摘で、ぐっと身近になった気がしてくる不思議。

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