和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

屋根の雨漏り修理。

2019-10-22 | 安房
10月は、山車の祭があるのですが、
今年は、台風15号の影響で中止。
他地域では、祭礼を予定していたのですが、
結局は、台風19号と重なり中止。
ということで、こちらでは、
10月の祭はありませんでした。

祭なしの地域の集まりには、
話題が台風の話になります。
屋根へビニールシート掛けるのは、
自分でやったという方もおり、
50代の方の話をきくと、
瓦屋根で最初は及び腰で、
あとは、スラスラと自分流で掛けていたそうです。

うちでは、トタン屋根でして、
屋根の傾斜がゆるやかで、しかも、
二階の窓から、すぐに屋根にあがれる。
そんなつくりなので、抵抗なく
屋根には上がれるのでした。

屋根といえば、
鶴見俊輔氏の短文に、
屋根が登場する箇所があって、
思い出して探していたのですが、
ありました(笑)。

晶文社の「鶴見俊輔座談 全10巻」。
そのパンフレットに。その箇所はありました。

詳しくは、鶴見俊輔座談の第一回配本「日本人とは何だろうか」。
そのご自身による「あとがき 日本人になる前」に書かれております。

もう少し詳しくいうと、
パンフレットと「日本人になる前に あとがき」とは
おなじ箇所を取り上げていても、微妙に言葉の配分が異なりました。
それはそれで、おもしろいのですが、その微妙さははぶきます。

では引用。
あとがきには、こう表現されておりました。

「生涯の最初の時期の、日本人のわくの前の記憶・・・は、
私にとって、自分の思想をつむぐ時の導きの糸となった。

戦後に仕事をはじめたころ、ききがきをとりにまわった。」

こうして、若槻禮次郎氏をたずねた場面をふりかえり、
その次に、明治の社会主義者・石川三四郎氏をたずねます。
屋根の話は、石川氏をたずねた場面に登場するのですが、
ここでは、まわり道して、お二人とも引用してゆきます。

うん。ここでは、パンフレットから引用。

「戦争(大東亜戦争)が終わり、
若槻礼次郎さんに会いに、伊東の家を訪ねたことが
あるんです。暑い暑い日でした。

『ごめんください、ごめんください』何回いっても
誰もでてこない。長い間、怒鳴っていると、
ふんどし姿であらわれたんです。若槻さんでした。
細君は、いま、買い物に行って家には誰もいない、
という、使用人はいないんです。わたしは、家にあがり、
用意してきたカードを出して、筆記しました。
八十歳の若槻さんと二十三歳のわたしが対座したんです。
わたしの手作りの質問に、『捨て子であって両親は知りません』
という生い立ちから、話は始まりました。
『酒が好きなのに、戦争中は飲めなくて困った』とかね。

若槻さんの話を聞きとりながら、驚きをおぼえてきたんです。
十代のわたしをとらえていた、戦争の恐怖感にとらわれていない
人が、いま、こうして目の前にいる。それは、
どこからきているのだろうか。それを考えたのです。

日本というこの国のかたちが、まだ定まらないうちに
生を受け、国を作り変えるために生涯努力してきた人、
戦争中、政府によってつくられた『日本人』から
遠くはなれた人が、ここにいる。
スケールの大きさを感じたんです。

石川三四郎さんを訪ねたときも、そうでした。
ちょうどお昼でしたが、石川さんは屋根にのぼって、
雨漏りのするところを修理していたんです。
いまのわたしと同じ齢くらいの人がですよ。」

ちなみに、鶴見俊輔氏は1922年生れで、
この座談集が出るのは1996年。
ということは石川三四郎氏は74歳頃なんでしょうか?
うん。私が70歳を過ぎて、その頃に、また台風がやってきて、
屋根がどうにかなってしまい。その屋根を修理している
自分を思い描いてしまいます(笑)。
それはそうと、石川三四郎氏にもどります。

「それから、家で飼っている山羊の乳をしぼって、
すすめられました。あとになって、戦争末期、
石川さんが近藤憲二さんに
『カーペンター翁の命日を二人で蘆花公園でやろう』
という誘いの葉書を平気で出していたことを知った。
これを知ったときも、感動しました。

対談という、もともとの伝統は、連句、座の文学なんですね。
戦国時代、城攻めのときは、待ち時間がものすごくあるでしょう。
そのとき、座興のために連歌師の宗祇のような人が、かたちを
つくったんです。それ以前には、男女が山や市などに集まって
お互いに歌を詠み交わす、歌垣のような『万葉集』のころからの
洗練された伝統があるんですね。・・・」

もどって、
この「鶴見俊輔座談」のパンフレットの言葉は(談)となっており、
「日本人になる前 あとがき」は5頁の文章です。

コメント
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