和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

八月 遊ぼうと働こうと

2023-08-25 | 詩歌
「富士正晴詩集1932~1978」(泰流社・1979年)。
そこに、サンケイ新聞に連載された各月の詩が載っていたのでした。

     ギラギラ八月   富士正晴(1962年8月1日)

 むくむくのぼる入道雲も
 波ごとに日光を撥ねる海も
 山も、森も、林も、道路も、土も
 草も、木も、車も、建物も
 わけてやたらと動き回る人間共が
 ギラギラと発光す八月、ギラギラ八月  

 ・・・・・・


はい。こうはじまる詩があったりするのですが、
サンケイ新聞の1964年8月1日に掲載された詩も引用。

     八月・虫・人   富士正晴

  遠くの遠くのはるかな所で
  蝉がじいじいとないている
  と、近くの大木の幹で、電柱で
  一せいにがなりたてる
  トランジスタを運び歩くガキ共さながら

  石ころのごろごろした庭を
  蟻が黙々と行列していく
  黙々と? そうではない
  奴らのせわしない雑談が聞こえないだけだ
  一列に連なり登る登山者の映画みたいに

  ・・・・・・・・・・・・

  蟻そっくりにぶつぶついいつつ生きてゆく
  八月 遊ぼうと働こうと人間は虫みたい見える

コメント
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