小林秀雄著「考えるヒント」を、
私は10代後半から20代頃に読んだような気がします。
この中に、『青年と老年』という5ページほどの文がありました。
最初に読んだ時は、堀江謙一著「太平洋ひぼりぼつち」が気になった。
それから、後に読んだ時は、徒然草の153段からの引用が気になった。
今回読み直したら、最初の導入部が気になりました。
ということで、その最初の箇所を引用。
「 『 つまらん 』と言ふのが、亡くなった正宗さんの口癖であつた。
『 つまらん、つまらん 』と言ひながら、何故、ああ小まめに、
飽きもせず、物を読んだり、物を見に出向いたりするのだらうと
いぶかる人があつた。しかし、『 つまらん 』と言ふのは
『 面白いものはないか 』と問ふ事であらう。
正宗さんといふ人は、死ぬまでさう問ひつづけた人なので、老いて
いよいよ『 面白いもの 』に関してぜいたくになった人なのである。
私など、過去を顧みると、面白い事に関して、
ぜいたくを言ふ必要のなかつた若年期は、夢の間に過ぎ、
面白いものを、苦労して捜し廻らねばならなくなつて、
初めて人生が始つたやうに思ふのだが、
さて年齢を重ねてみると、やはり、次第に好奇心を失ひ、
言はば貧すれば鈍すると言つた惰性的な道を、いつの間にか行くやうだ。
のみならず、いつの間にか鈍する道をうかうかと歩きながら、
當人は次第に圓熟して行くとも思ひ込む、そんな事にも成りかねない。 」
はい。今回読みかえしたら、この初めで、私はもう満腹です。
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