岩波少年文庫の大岡信「おとぎ草子」(1995年)が手元にあるのでひらく。
この少年文庫は一寸法師で始まり、次が浦島太郎、さらに鉢かつぎ・・・。
はい。この機会に、浦島太郎が玉手箱をひらく場面を引用。
「・・そもそもこれは、あの亀が竜宮で過ごしたあいだの浦島の歳を、
報恩の心をもって一年一年ていねいに箱の中に畳みこんでくれていたのだ。
さてこそ太郎は、七百年の齢(よわい)をも保ちえたのであった。
開けるなとあれほどいましめられたのに、ついに開けてしまうとは、
まことにしょうのないしわざだった。されば後世の恋歌にも言う通りである。
君にあふ夜は浦島が玉手箱あけてくやしきわが涙かな
( あなたに逢う一夜とは 浦島の玉手箱も同然です
夜はたちまちあけて(開けて・明けて)しまい
わたくしはくやし涙にくれるのです )
・・・浦島は鶴に変わり、神仙の住む蓬莱山にゆうゆうと舞う身となり、
亀は亀で、おどろくなかれ万年の寿命を生きるという。
さてこそめでたいものの筆頭を『 鶴亀 』という。・・・
浦島太郎はその後、丹後の国に浦島の明神となって顕(あらわ)れ、
衆生をお救いなさった。亀もまた同じところに神として顕れ、
夫婦の明神(みょうじん)とおなりになった。
まことにめでたい話であった。 」(p36~37)
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