大村はま講演の「教師の仕事」に、こんな言葉がありました。
「 やはり未来の建設に役立つ人間を確実に育て上げる人、
育て上げようとしている人だけが教師なのです。・・・ 」
( p96 「新編教えるということ」ちくま学芸文庫 )
ちなみに、この文庫のなかの講演で「教室に魅力を」には
「 『 単元学習でも入学試験とおりますか? 』といったような質問に、
私はたびたびあっています。入学試験はおろか、
非常に優れた国語の力をつけようと思って、単元学習をやっているのです。
・・ひとりひとりを卓越した言語生活者にと目指す時、
そうでない方法ではその力はつけられないからです。・・
優れた子ですと、何も努力しなくても、なにかやれるものなのです。
そういう姿を見て、もっとやりたいことを思いついて、
『よし!』と立ち上がってやっていく、そういうふうに
させられなければ、私は単元学習というものの命はないと思います。
もち合わせの力で、ただ楽しくやっても、それでは、
学習にならないと思います。 」( p195 )
う~ん。『入学試験とおりますか?』と
『 未来の建設に役立つ人間を確実に育て上げる 』と。
この二つの言葉のカードを並べて、思い浮んでくる箇所がありました。
私が思い浮かべるのは大村はま先生の『話し合いの指導』の箇所です。
ちくま新書「教えることの復権」から、それを引用しておきます。
「 私自身もおしゃべりではあったけれども、
きちんと話す力は持っていないと思いました。
それで、会議の仕方なんていうのを、アメリカ人を講師とする
講習会に行って習ったりもしたんですよ。・・・ 」( p69 )
このあとに、西尾実さんが登場しております。
「そのうち西尾実先生(大正・昭和期の国語学者。
国立国語研究所初代所長。話し言葉の発展を軸とする国語教育を提唱した)
が話しことばの会をお始めになる。西尾先生は
話すことについて日本で初めてほんとうに学問としても受け入れることができ、
実績としてもいいものをお残しになったと思います。
先生は、二人でする対話というのが大事で、その最小単位の
二人の話で本心がすらすらと出てこなければならないんだと教えてくださった。
問答というのは片一方が問うて、片一方が答えるもので、
だいたい日本の先生は問答のことを対話だと思っている。
でも大事なのは問答ではなく、対話だとおっしゃった。
でも対話を教室に持ち込むのは容易でないことですよ。
聞き手のいない二人の話、そういうチャンスは単元学習でもしないと、ない。
そういうときにほんとうの気持ちを話すという経験ができる。
本心が声になって出る習慣というか力というのを持たないと、
話しことばというのは成立しないとおっしゃっていたんです。
・・・・思っていることをちゃんと音にして出すという、
そういう意欲を日本人は持っていないと、西尾先生はおっしゃっていた。
そういう見方で、ことばを使っていない。
お世辞がじょうずとかぺらぺら話せるという人はいっぱいいるけれども、
ほんとうの自分というものを声に乗せられるというのは大変なことだ、
大村さんの教室でもできていない。だめだっておっしゃってね。・・・
書くことも同じですよ。じょうずもへたもない、役に立つかどうかでもない、
自分の心を文字というものを使ってそのまま伝わるものにする。
書くというのはそういう技術だということ。 」( p71 )
はい。ここでした。西尾実の本を読んでみたくなったのは。
はい。『書くというのはそういう技術だということ』から、
梅棹忠夫著「知的生産の技術」を思い浮かべたりしました。
さあ、大村はま先生のスタートラインに立つと、
新しく読みたくなったのが、西尾実。
読みかえしたくなったのが『知的生産の技術』。
ということで、古本屋の出番。
『 西尾実国語教育全集 』全12冊揃い、5600円(送料共)を買う
( ここで買うといい。読むとはいっていないのがミソ )。
これから、大村はま、西尾実を読めるかどうか?
なあ~に脱線したら、また最初からの反復反芻。
自分の心を文字というものを使ってそのまま伝わるものにする。
同意します。結局書くことも話すことも人間力の出ていないものは本物でないということを言っているのだと読ませていただきました。
梅棹忠夫先生の『知的生産の技術』を再読したくなりました。たぶん図書館で借りて読んで買っていないと思います。が、今は古書で安く買えますから、また積読になりますが、買うかもしれません。
コメントありがとうございます。
読み返したい本というのは、
こらは手元におきたいなあ。
『知的生産の技術』は分からないながら、
読むたび、新しく読んでいる気がします。
それでなのか最初に買った新書はバラバラ
ぼろぼろになって、数冊買った気がします。
はい。読むたびに新鮮な気がするのは、
『知的生産の技術』ならではの楽しみ。