山梨百名山から見る風景

四方を山に囲まれた山梨県。私が愛して止まない山梨の名峰から見る山と花と星の奏でる風景を紹介するページです。

山梨県の絶滅危惧の花たちとその現状 ~三ツ峠勉強会②~

2018年06月15日 | 番外編
 三ツ峠での高山植物勉強会の続きである。今回は着生植物と腐生植物について記載する。特に2018年レッドデータブック書き換えで2種類の着生ランが新たに登録され、絶滅危惧DD類(情報不足)だったムギランがⅠB類になったのでそれらの画像を提示する。

 フガクスズムシソウ(絶滅危惧ⅠA類):富士山麓の広葉樹林の木の上に生育している植物。空気湿度が生育する上で大きく関与しており、霧が発生し易くて雨の多い樹林帯を好む。大部分がツガの植林帯になっている富士北麓だが、その中に残っている広葉樹林の森にわずかに生育している。


    フガクスズムシソウ(富士北麓) 苔の生えた高い木の上に生育している。


    形はスズムシソウに良く似ているが別物である。

 ツリシュスラン(絶滅危惧ⅠA類):フガクスズムシソウと同じく空気湿度の高い富士山麓の広葉樹林の森にわずかに生育している。


    ツリシュスラン(富士北麓)


    平成28年は特別にたくさんの花を咲かせたがその翌年は葉のみで花は咲かせなかった。

 マツラン 別名ベニカヤラン(絶滅危惧ⅠB類):今年から新たに絶滅危惧種に登録された植物である。富士北麓の森に生育しておりハウチワカエデを好んで着生している。


    マツラン(富士北麓) ハウチワカエデの高い位置を好んで生育する。


    樹皮の隙間に根を延ばして着生する。


    ポリネーターの蜂が吸蜜している。


    花が終わりの頃には紅色に変わる。

 ムギラン(絶滅危惧種ⅠB類):2008年版のレッドデータブックでは絶滅危惧DD類(情報不足)だったが2018年版でⅠB類となった。南部町の川沿いに生えた木に稀に着生している。


    ムギラン(南部町) 


    木の幹にびっしりと着生している。


    豆のような偽球茎から葉を出している。まだ蕾の花茎も偽球茎から分枝しているように見える。

 マメヅタラン(絶滅危惧種ⅠB類):レッドデータブック2018年版から絶滅危惧ⅠB類に登録された植物。ムギランと同じく南部町の川沿いの木に稀に着生している。


    マメヅタラン(南部町)


    びっしりと花を付けるその姿は圧巻だが、距離が遠いので双眼鏡で覗かないとその姿は見られない。

 着生植物は高い木の上で生活するので食害とは無縁であるが、木が倒れたり枯れたりすることで生育が脅かされること、また数が少なく種を飛ばして木から木へ生育範囲を伸ばすことも確率的に難しいことが難点であろう。ただし、空気湿度を必要とするので地球温暖化には強い(むしろ好都合な)植物と言えるのではないかと思う。


 次に腐生植物についてである。名称が菌従属栄養植物に変わったようであるが、今回は使い慣れている腐生植物の名前を使わせていただく。

 トラキチラン(絶滅危惧ⅠA類):富士山山梨県側の寄生火山での生育が確認されているがそのほかに御坂山系や南アルプスでも見つかっている。いずれの場所も個体数は少なく年々減少傾向にある。


    トラキチラン(富士北麓)


    葉緑素を持たない腐生植物。半透明の花がなんとも言えない魅力的な美しさを持つ植物。

 キバナノショウキラン(絶滅危惧種ⅠA類):富士山麓で生育が確認されているが近年花数が激減している。ナラタケの菌に従属している。


    キバナノショウキラン(青木鉱泉)


    レッドデータブックに記載の無い場所でも発見されている。

 ミヤマツチトリモチ(絶滅危惧種ⅠA類):一見花とは思えないような形をしている。雌花は見つかっているが雄花は見つかっていないまだ不明なところが多い植物である。


    ミヤマツチトリモチ(青木鉱泉)


    一見キノコのようだがこれでも列記とした花である。こんなものを食べる虫も居る。

 腐生植物は従属する菌によって個体数が大きく変わるので、数的な変化を見るには何年か経過を見て行かないと推移を見極めるのは難しいかと思う。しかし、トラキチランに関しては山梨県だけでなく八ヶ岳界隈の生育地も明らかに数を減らしているように見受けられる。どうすれば保護できるのかは全くわからない。




 
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山梨県の絶滅危惧の花たちとその現状 ~三ツ峠勉強会①~

2018年06月15日 | 番外編
 平成30年6月9日に三ツ峠の高山植物学習会で上映したスライドから抜粋して提示したいと思う。100枚近いスライドを上映したので4回くらいに分割して記載する。

 ウチョウラン(絶滅危惧ⅠA類):岩場の中にある草地を好んで生育している。山野草ブームの際に再三の盗掘被害に遭って激減してしまい、今では人の近付かない険しい岩場でわずかに咲き残っている感じではあるが、ここ数年若干数が増えているように見える。


    ウチョウラン(御坂山塊)


    急峻な岩場の中の草地を好んで咲く


    個体数は横ばいか、若干増えているように見える。


 オノエラン(絶滅危惧ⅠA類):この花も急峻な岩場を好むがウチョウランとは若干環境が違い、住み分けているように見える。


    オノエラン(御坂山塊)


    岩場の草地の中にひっそりと咲く

 ホテイラン:山梨県では南アルプスのごく限られた場所に生育している。食害の影響か、あるいは登山者の増加による登山道の硬化の影響か、生育地の山肌の乾燥化により数が減少しており危機的な状況にある。


    ホテイラン(櫛形山)


    この場所は登山道が無いバリアンスルートだが、山肌が乾燥化して減少傾向にあり、個体数はなんとか30~50個を数える。


    年々数を減らしている南アルプスのホテイラン。


    櫛形山と同じく山肌が乾燥化している。この現象をくい止めるのは難しい。最も有効と思われるのは保護柵かも知れないが回復するには年数を要するであろう。

 ベニシュスラン(絶滅危惧ⅠB類):今年から新たに絶滅危惧種に登録された植物である。苔の生した岩の上を好んで生育している。


    ベニシュスラン(南部町) 苔の生えた岩場を好んで生育している。


    花も葉も美しい植物

 マツバニンジン(絶滅危惧ⅠA類):梨ヶ原の広大な草地の中の一部に生育している。個体数が少ないうえに近年は鹿の食害を受けて減少しており、危機的な状況にある。


    マツバニンジン(梨ヶ原)


    午前中に花を咲かせて午後には散ってしまう。


    昨年は食害の跡も見られて数は減少している。

 スルガジョウロウホトトギス(絶滅危惧ⅠA類):盗掘に遭い著しく減少してしまい残っているのかどうか不明だったが、何度か探索調査に行き2015年に南部町の奥深い谷の中でひっそりと生育しているのを発見した。高い岩壁に咲く花なので鹿の食害には無縁で、岩盤の崩落や盗掘が無ければこれからも生育してくれると思われる。


    スルガジョウロウホトトギス(南部町)


    深い谷の岩壁にぶら下がるように咲いている。


    谷間の岩壁にぶら下がるその姿がなんとも言えず美しい花。地形とヤマヒルに守られた天然の要塞である。

 ヒロハノカワラサイコ(絶滅危惧DD類 情報不足):今年から登録された植物で、環境省絶滅危惧種Ⅱ類に分類されている。梨ヶ原の一部で生育しているのを確認しているが、そのほかに県内の某森林公園敷地内でもそれらしき葉を見ている。Ⅱ類ないしはⅠB類あたりに入ってくるのではないかと思われる。


    ヒロハノカワラサイコ(梨ヶ原)


    バラ科 キジムシロ属の花で、葉の形がちょっと違うキジムシロのように見える。

 絶滅危惧種というだけあって手放しでこれからも生育できる植物は稀であると言わざるを得ない。どうやってこれらの花を守って行けば良いのかを考えて行かなければならないと思う。(続く)



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