山梨百名山から見る風景

四方を山に囲まれた山梨県。私が愛して止まない山梨の名峰から見る山と花と星の奏でる風景を紹介するページです。

山梨県に生育するオシダ科カナワラビ属のシダ

2020年03月10日 | シダの仲間
 山梨県に生育しているオシダ科カナワラビ属のシダは8種類である。いずれのシダも常緑性であることから、今期の冬の間にこれらのシダが多く生育している山梨県県南部に何度か探索に出かけ、カナワラビ属のうちの7種類に出会うことが出来た。これは自分自身の整理のための記事で間違っているところがあるかと思うのでそのつもりでご覧いただきたい。

 8種類のオシダ科カナワラビ属とは以下のシダである。

1.リョウメンシダ
2.シノブカグマ
3.ハカタシダ
4.オオカナワラビ
5.オニカナワラビ
6.ホソバカナワラビ
7.ミドリカナワラビ
8.コバノカナワラビ

 このうち、3、4、7が山梨県2018年版レッドデータブックの絶滅危惧種である。5のオニカナワラビは2007年版ではレッドリストに入っていたが2018年版では登録されていない。

1.リョウメンシダ
 どちらかというと暖地性のシダで、山梨県では身延町から南部町にかけての沢沿いでは普通に見かけるシダである。しかし、北杜市や韮崎市、上野原町にも生育しているらしい。大型のシダで群生し、良く目立つ。


    群生するリョウメンシダ。南部町内船で観察したもの。


    大型化するシダで、鮮やかな黄緑色をしており目立つ。


    裏側のソーラス。中軸寄りからびっしりと付く。


    渓谷の中に垂れ下がる姿はそれなりに格好良くて美しい。

2.シノブカグマ
 やや標高の高いところを好んで生育する緑色の光沢が鮮やかなシダである。瑞牆山では普通に見かけるが富士山の樹海や御坂山塊にも普通に生育している。


    瑞牆山の沢沿いで見かけたシノブカグマ。濃い緑色の光沢が美しい。


    富士山の樹海の中で観察したもの。風穴を覗き込むように生えていた。


    風で揺れてソーラスの撮影はいまひとつだった。小羽片のやや辺縁寄りに付着する。特徴的なのは中軸に付着する黒い鱗片である。

3.ハカタシダ
 県南部に多く生育しているが、甲府市でも見ることが出来る。準絶滅危惧種ではあるが個体数は多く生育範囲も広いことから、次のレッドデータブック書き換えでは絶滅危惧種ではなくなるかも知れない。


    南部町内船で観察したハカタシダ。頂羽片がはっきりしており、小羽片辺縁の切れ込みが少ない。


    甲府市武田の杜遊歩道で見たもの。大型化するものもある。


    ソーラス。


    小羽片のやや辺縁寄りにソーラスが付着する。

4.オオカナワラビ
 山梨県絶滅危惧ⅠB類のシダである。県南部で多く見かけるが甲府市中道町でも発見した。県南部での個体数は比較的多い。


    南部町の林道で見たオオカナワラビ。頂羽片ははっきりしている。


    ソーラス


    小羽片の辺縁寄りにソーラスが付着する。ハカタシダと違って小羽片の辺縁が鋸歯状に切れ込む。


    別の林道沿いで見かけたオオカナワラビ。最下羽片の発育は個体差が大きく、この個体のように第3羽片まで発育しているものもあれば全く無いものもある。

5.オニカナワラビ
 絶滅危惧種には指定されていないが、個体数はオオカナワラビよりも少ない印象を受ける。葉は厚くて硬く、触った感じはゴワゴワして葉先の突起が痛い感じがする。オオカナワラビに似ているが頂羽片ははっきりしないか、あるいは無い。


    南部町の林道で見たオニカナワラビ。葉の感じはオオカナワラビに似ているが頂羽片がはっきりしない。


    ソーラス


    小羽片の中肋寄りにソーラスが付着する。小羽片辺縁の切れ込みは浅く、ハカタシダに似る。


    葉を触るとゴワゴワしていて硬い。

6.ホソバカナワラビ
 まだ調査不足であるが、オニカナワラビよりももっと少ない印象を受ける。見つけたのは今回示す個体のみである。群生するらしいので探せばどこかに群落が見つかるかも知れない。


    南部町の竹藪の中で見かけたホソバカナワラビ。見つけたのはこの個体のみ。


    頂羽片が細く、際立って長い。


    ソーラス


    小羽片の辺縁寄りにソーラスが付着する。辺縁は切れ込む。

7.ミドリカナワラビ
 黄緑色の光沢が鮮やかな美しいシダである。個体数はオオカナワラビよりも少ない印象を受け、さほど多くは見かけない。絶滅危惧ⅠB類のシダである。


    南部町の林道脇で見かけたミドリカナワラビ。黄緑色の光沢が鮮やかで目立つ。


    ソーラス


    小羽片の中央に小さめのソーラスが付着する。


    カナワラビ属を代表する美しいシダである。黄緑色のシダの妖精と言っても良いように思う。

 1シーズンで探し出すのは困難であろうと思っていたオニカナワラビとホソバカナワラビに出会えたのは大きかった。さらには、是非見てみたいと思っていたミドリカナワラビとの出会いは嬉しかった。まだまだ実力不足、かつ調査不足のところが多数あり、もっと豊かにシダが生い茂る場所が見つかるだろうと思っている。残るカナワラビ属はコバノカナワラビのみとなったが、もう少し実力と観察力をつけないと見逃してしまうかもしれないし、ひょっとしたらもう出会っているのかも知れない。引き続き探索を進めて行きたい。

コメント (1)
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