ランクの高い絶滅危惧ⅠA類のシダはやはりそう簡単には姿を見せてくれない。2018年版山梨県レッドデータブックに登録されているⅠA類27種類のうち2020年3月現在で見てきたのは15種類で、それでも半年という短期間で良くこれだけ見てきたものだと思う。しかし、探すのはきわめて困難と思われるイナツルデンダやミヤマハナワラビ、コタニワタリ等の難しいシダが何種類も残っており、撮影がうまく出来ていないシダも多数ある。シダも花もそうであるが、絶滅危惧種のランクが高いほど綺麗なものが多いというわけでは無いが、なかなか出会えないものに出会うとやはり感動するものである。八ヶ岳で見つけたヤツガタケシノブや最近出会ったタキミシダなどは心が震える感動を覚えたが、その感動が写真にうまく表現されているかどうかは別物である。フジシダはシダ自体も美しかったが、同時にそのシダが生育している苔が生い茂る渓谷の景色に感動した。そんな感動とともに撮り歩いてきたシダの仲間たち、今回はⅠA類の珍しいシダたちの何種類かをご覧いただきたいと思う。
ヒメスギラン(ヒカゲノカズラ科)
北岳でコスギラン(ⅠB類)を見てきたが、コスギランとヒメスギランはどこがどう違うのか見比べるために、レッドデータブックの記述を参考にして見つかるかどうか分からない瑞牆山に探索に出かけた。個体数は少ないが沢沿いに点々と生育しているこのシダに出会うことが出来た。
渓谷沿いの苔に生育するヒメスギラン(瑞牆山) 最初に見つけたのがこの個体で、本物かどうか目を疑った。
沢沿いから中腹にかけての湿った苔の生えている岩や石に生育していた。
マツバラン(マツバラン科)
茎だけで根も葉も持たない原始的な形態のシダである。かつては甲府市近傍の竹林の林床にも生育していたらしいが現在では見当たらず、山梨県で確認されているのは1カ所のみとなっている貴重なシダである。
木の幹の隙間に生育しているマツバラン(南部町)
葉も根も無く全てが茎で、茎の分かれ目に丸い胞子嚢が付着している。
クリハラン(ウラボシ科)
湿った渓谷や水際を好んで生育する南方系のシダである。形態が栗の葉に似ている。県南部に生育し、群生する。
沢沿いの斜面に生育するクリハラン(身延町) 円形のソーラスが中央寄りに付着する。
南部町の沢沿いではこんな用水路のようなところにも生育していた。
キタダケデンダ(イワデンダ科)
北岳の特産種である。生育場所も個体数も少なく環境省でもⅠA類になっている。
岩の隙間に生育するキタダケデンダ(北岳) 登山道沿いで見られるのはおそらくこの場所のみであろう。
裏側のソーラスには毛が生えている。
ヤツガタケシノブ(イノモトソウ科)
山梨県では八ヶ岳と北岳に生育する高山性の小型のシダである。生育場所も個体数も少ない。
湿った岩に生育するヤツガタケシノブ(八ヶ岳) この場所は比較的個体数が多かったが他の場所では見つからなかった。
辺縁の葉は巻き込み、その裏にソーラスが付着する。
タキミシダ(イノモトソウ科)
渓谷の苔が生えた岩壁を好んで生育する。分布限界種で、生育地が限られ個体数もかなり少ない。
渓谷の苔生した岩壁に生育するタキミシダ(南部町)
網目状の葉脈。ソーラスは確認できなかった。
オニイノデ(オシダ科イノデ属)
硬い葉を持つ緑色の光沢鮮やかなイノデの仲間である。根元近くには幅広い鱗片をたくさん付着させる。生育地が限られており個体数も少ない。
林道脇に生育していたオニイノデ(身延町) 大きな個体に出会ったが残念ながらだいぶ痛んでいた。
光沢のある緑色の葉、いかにも硬そうな印象を受ける。
ノコギリシダ(メシダ科)
光沢のあるやや硬めの葉を持つシダである。辺縁が鋸のようにギザギザしていることからこの名がある。生育地が極限られているが生育場所での個体数は多い。
ノコギリシダとリョウメンシダが共存する谷(南部町) 素晴らしい谷である。
濃い緑色が鮮やかな格好良いシダ。
フモトシダに似ているがソーラスの形は全く違う。
フジシダ(コバノイシカグマ科)
苔生した渓谷や森の中を好んで生育する緑色鮮やかなシダ。葉が薄くて全体的に細長く華奢な感じがする。生育地は限られているが生育場所での個体数は多い。
苔生した渓谷の岩に生育するフジシダ(笛吹市)
苔の上にしか生育して居なかった。
長く垂れ下がり、先端には無性芽と小葉が出ている。
いかがだっただろうか?図鑑で見るシダだけを切り抜いた画像では無く、どんな環境のところにこの美しいシダたちが生育しているかを見ていただけたことかと思う。確かにシダはみんな緑色で花は無いかも知れないが、それぞれの環境の中でそれぞれの個性を放って生育して居るのである。私はこのようなシダたちはたくましくて健気で美しいと思っている。いつか、このような美しいシダたちの画像を集めて、図鑑とは違う写真集が発刊できたらと願っている。
ヒメスギラン(ヒカゲノカズラ科)
北岳でコスギラン(ⅠB類)を見てきたが、コスギランとヒメスギランはどこがどう違うのか見比べるために、レッドデータブックの記述を参考にして見つかるかどうか分からない瑞牆山に探索に出かけた。個体数は少ないが沢沿いに点々と生育しているこのシダに出会うことが出来た。
渓谷沿いの苔に生育するヒメスギラン(瑞牆山) 最初に見つけたのがこの個体で、本物かどうか目を疑った。
沢沿いから中腹にかけての湿った苔の生えている岩や石に生育していた。
マツバラン(マツバラン科)
茎だけで根も葉も持たない原始的な形態のシダである。かつては甲府市近傍の竹林の林床にも生育していたらしいが現在では見当たらず、山梨県で確認されているのは1カ所のみとなっている貴重なシダである。
木の幹の隙間に生育しているマツバラン(南部町)
葉も根も無く全てが茎で、茎の分かれ目に丸い胞子嚢が付着している。
クリハラン(ウラボシ科)
湿った渓谷や水際を好んで生育する南方系のシダである。形態が栗の葉に似ている。県南部に生育し、群生する。
沢沿いの斜面に生育するクリハラン(身延町) 円形のソーラスが中央寄りに付着する。
南部町の沢沿いではこんな用水路のようなところにも生育していた。
キタダケデンダ(イワデンダ科)
北岳の特産種である。生育場所も個体数も少なく環境省でもⅠA類になっている。
岩の隙間に生育するキタダケデンダ(北岳) 登山道沿いで見られるのはおそらくこの場所のみであろう。
裏側のソーラスには毛が生えている。
ヤツガタケシノブ(イノモトソウ科)
山梨県では八ヶ岳と北岳に生育する高山性の小型のシダである。生育場所も個体数も少ない。
湿った岩に生育するヤツガタケシノブ(八ヶ岳) この場所は比較的個体数が多かったが他の場所では見つからなかった。
辺縁の葉は巻き込み、その裏にソーラスが付着する。
タキミシダ(イノモトソウ科)
渓谷の苔が生えた岩壁を好んで生育する。分布限界種で、生育地が限られ個体数もかなり少ない。
渓谷の苔生した岩壁に生育するタキミシダ(南部町)
網目状の葉脈。ソーラスは確認できなかった。
オニイノデ(オシダ科イノデ属)
硬い葉を持つ緑色の光沢鮮やかなイノデの仲間である。根元近くには幅広い鱗片をたくさん付着させる。生育地が限られており個体数も少ない。
林道脇に生育していたオニイノデ(身延町) 大きな個体に出会ったが残念ながらだいぶ痛んでいた。
光沢のある緑色の葉、いかにも硬そうな印象を受ける。
ノコギリシダ(メシダ科)
光沢のあるやや硬めの葉を持つシダである。辺縁が鋸のようにギザギザしていることからこの名がある。生育地が極限られているが生育場所での個体数は多い。
ノコギリシダとリョウメンシダが共存する谷(南部町) 素晴らしい谷である。
濃い緑色が鮮やかな格好良いシダ。
フモトシダに似ているがソーラスの形は全く違う。
フジシダ(コバノイシカグマ科)
苔生した渓谷や森の中を好んで生育する緑色鮮やかなシダ。葉が薄くて全体的に細長く華奢な感じがする。生育地は限られているが生育場所での個体数は多い。
苔生した渓谷の岩に生育するフジシダ(笛吹市)
苔の上にしか生育して居なかった。
長く垂れ下がり、先端には無性芽と小葉が出ている。
いかがだっただろうか?図鑑で見るシダだけを切り抜いた画像では無く、どんな環境のところにこの美しいシダたちが生育しているかを見ていただけたことかと思う。確かにシダはみんな緑色で花は無いかも知れないが、それぞれの環境の中でそれぞれの個性を放って生育して居るのである。私はこのようなシダたちはたくましくて健気で美しいと思っている。いつか、このような美しいシダたちの画像を集めて、図鑑とは違う写真集が発刊できたらと願っている。