1910年から1945年までの35年間、朝鮮半島全域は日本の領土であった。武力による併呑である。この暗い歴史を忘れるためにも日本人は韓国のことを遠ざけて来た。しかし近年、映画やテレビ番組の交流が進み、また多くの観光客がお互いに訪問している。素晴らしいことではあるが、日本人は韓国を深く理解していないと思う。いや知らな過ると言えば過言であろうか。
1985年に韓国金属学会の大会へ出席し浦項製鉄所を見学した。その前後に観光旅行もした。同行してくれたのが製鉄所の技師のHさんであった。この写真にある佛国寺をはじめ、慶州周辺の古寺を数ヶ所回った。小山全体に僧堂が散在し、中心に大きな瓦屋根の本堂が建っている。そのような小山が数峰連なり、慶州の町を取り囲んでいる。本堂の瓦屋根の稜線は、中心が少し低くなった曲線を描いている。なんとも言えない宗教的な雰囲気をかもし出している。
しかし、全ての寺の山門の脇に、立派な真鍮製の看板があり、韓国文字でなにやら書いてある。良く見ると、秀吉という漢字が何回も出ている。同行したH技師へ聞くと、「秀吉さんの朝鮮成敗の折に、この寺は完全に焼失されたと書いてあるのです」と言う。「でも今日見た全部の寺に看板がありましたよ?」、「そうです。秀吉さんは朝鮮全土の寺を全て焼いたのです」
そんなことは知らなかった。戦争中に国民学校で秀吉は朝鮮に虎退治に行ったと習った。全ての寺を焼き尽くしたとは聞いたことが無い。日本人の多くは、韓国で秀吉が、このように書かれているとは知らないと思う。韓国人だけが知っているのだ。
@大邱市の天主堂のミサに出る
外国旅行では、お寺へ寄るような気軽さで、教会へも行くことにしている。その土地の人々のお祈りしている姿を眺めるとなにか安心する。見知らぬ土地を旅する緊張感が消えてしまう。韓国の金属学会の大会のある大邱市でも、中心街にある天主堂のミサに参加した。韓国語なので何を言っているのか理解出来ないが、カトリックのミサは万国共通で同じだ。ミサ後、同行したH技師が主任司祭さんへ紹介してくれた。そして韓国の宗教の説明を、少しだけ聞いた。洗礼を受けたキリスト教徒は総人口の30%で、仏教徒が23%、儒教が0.2%と言う。聞き違いと思い何度か確かめた。30%のうちプロテスタントが19%でカトリック(天主教)が11%と教えてくれる。忙しそうな主任司祭には長話は失礼と、すぐに別れて帰ってきた。日本に帰国後、韓国の宗教別の信者の数を調べなおした。しかし、上記の数字は正しかった。
@韓国のキリスト教信者の数を日本と比較する
日本では洗礼を受けたキリスト教信者は総人口の1%を越えていない。100万人位で、プロテスタント諸派が50万人、カトリックが50万人、そして日本ハリスト正教会が1万人といわれ、特に数十年にわたって増加も減少もしていない。
韓国には、ローマ法王が認めた聖者が104人で日本の聖者は26聖人である。
また韓国人はキリスト教の宣教師が全世界へ10000人以上も派遣されて活躍している。この数は日本より圧倒的に多い。
日本人は韓国を儒教の国や仏教徒の国と信じているが、実はキリスト教が盛んな国である。このようなことは韓国の観光情報をインターネットで検索しても出て来ない。また日本の新聞やテレビにも報じられて居ない。しかし韓国人を深く理解するためには重要なことではなかろうか。(終わり)
佛国寺の写真のURL : http://japanese.visitkorea.or.kr/jpn/TE/TE_JA_7_1_1.jsp?cid=281510