後藤和弘のブログ

写真付きで趣味の話や国際関係や日本の社会時評を毎日書いています。
中央が甲斐駒岳で山麓に私の小屋があります。

ファッションショーを見て何を考えますか?

2008年09月19日 | うんちく・小ネタ

001 006

テレビで時々ファッションショーのニュースを見る。見て美しいと感じ、いろいろと考える。「こんな女の人は現実には居ない!」とか「こんな服を着て町を歩くことなど無い!」と感じる。また「このモデルの人は具象的すぎる!もっと抽象的な美しさを持っているモデルのほうが服の美しさを引き出す」とも考える。上の写真の左が具象的なモデルのマネキン、右が抽象化したモデルの例である。

ファッションショーは女性の服飾の美を先鋭化した、斬新な服飾美の創造なのだ。実用的な服飾は、これからヒントや暗示を受けて、誰にでも着られるような量産品にしたものである。だから服飾産業界では重要な行事になっている。

ファッションショーのニュースを見る度に、昔、研究生活をしていた頃を思い出す。いつも兄のように世話をしてくれた H先生 が、よくモデルの話をしていた。科学研究でのモデルのことである。H先生は、よく「美しいモデル」という表現を用いていた。

自然界には人間の想像を超える複雑な現象が満ち溢れている。科学で解明されているのはそのごく一部で、大部分は手付かずのままになっている。

複雑な現象を一つだけ取り出して、その現象を単純化して、マンガのようなモデルにする。マンガとの違いは科学的根拠にもとづいて、数式で説明してあること。数式は単純なものほど、美しいモデルと言う。科学研究でモデルがあると複雑な現象の解明がしやすくなる。したがって、その分野の学問の進歩のために重要な役割を演ずる。

ファッションショーで抽象美を持った女性をモデルにすると、斬新な服装がより美くしく見えるのと似たようなことだ。

実例を一つ。日常、身の回りにあるガラスの原子配列が肉眼で見えたとしよう。

ナトリュウムやカリュウムやシリコンの原子が酸素の原子と結びついて複雑極まりない立体的な網目構造になっている。この複雑な立体構造を単純化して考える。

ナトリュウムイオンの球体、カリュウムイオンの球体、そしてシリコンが酸素と鎖状に結びついたイオン分子、この3種だけで出来ているとモデル化する。ついでにシリコンと酸素の結びついた鎖の長さをいろいろ考え、ある法則でその長さの分布が異なってくると仮定する。

こんな単純なモデル構造を仮定しただけでガラスの色々な性質が説明できる。カリュウムやナトリュウムを多くすると鎖状のイオンが短くなるのでガラスの軟化温度が下がる。シリコンを多く含ませると軟化温度があがり、耐熱性もよくなる。熱による膨張もしなくなるので急熱、急冷しても割れない。シリコンを多くすると鎖状のイオンが長くなるからである。

この単純化したガラスの構造モデルは実際の構造からかけ離れている。かけ離れてはいるがガラスの性質を説明している。さらにガラスの成分を変えると、その性質がどのように変化するか予測できる。「予測出来る」ことこそ科学研究の醍醐味なのだ。

ファッションショーによって、その年の服飾の流行を予測出来るのではないか? 一度、その道の専門家に聞いてみたい質問である。あまりにも強引な論理展開のようにも感ずるが、長年感じていた筆者の連想の世界を少し書いてみた。(終わり)

撮影場所:立川、高島屋デパートにて、撮影日時:9月13日午前11時