外国より高い技術水準を持っている事は2つの意味で大変重要な事です。
一つは高品質の工業製品を作り、輸出して経済的に豊かになるために重要な事です。この事は皆さまご存知の通りで、これ以上説明する必要はありません。
しかしもう一つの事は、先端技術を持っている事は、日本の防衛や安全にとって非常に重要な事です。
何度も書きますが科学技術は平和目的にも武器の改良にも使える双刃の剣なのです。
いろいろな実例を説明しながら、何故日本が科学技術の向上に努力すべきかをゆっくり書いて行きたいと思います。そして最終的には原子力技術が日本の防衛と安全のためにも重要な技術分野であるという側面を説明したいと思っています。
まず日本の航空産業技術を考えて見ましょう。敗戦で6年間、航空産業は厳禁されたため、大きな技術的遅れをとってしまいました。
その結果、現在日本では世界に売れる旅客機を製造する技術はありません。
唯一、「YS-11」という旅客機が製造されていましたが、一番難しいジェットエンジンはローリスロイス社製のものを使っていたのです。しかしYS-11の製造経験は日本の航空産業のレベルを格段に向上させたのです。
その技術的経験のお陰で現在航空自衛隊の使っているジェット戦闘機の練習機は日本で作っています。アメリカ軍から設計図を提供して貰えば旧式の戦闘機なら日本でも作れます。このように、航空技術はアメリカより劣っていますが、最新鋭の戦闘機でも設計図と部品の提供さえあれば日本でも製造可能なのです。
この技術力は日本の防衛にとって非常に重要です。独自に最新鋭の戦闘機は作れなくとも組立技術を持っている事が重要なのです。
一旦大戦争になって安保条約にしたがって日米合同作戦が始まった場合を考えてみましょう。アメリカは戦闘機の補充の為に日本の会社へ設計図を提供して製造を委託する事が出来るのです。これはアメリカのみでなく日本の安全を守る上で大変重要な事です。
このように日本の技術が防衛に寄与する為には「日米安保条約」の存在が非常に重要なのです。この冷厳な事実はいろいろな技術分野でも共通に見られることです。
それでは日本は航空技術においてアメリカに完敗してるのでしょうか?
実は部分的にアメリカより優位に立っている部品や材料もあるのです。一つはジェットエンジンの中に組み込まれるタービンの羽根(ブレード)です。その超合金製の羽根は一方向凝固技術で製造されますが、その技術は日本がより優れているのです。
もう一つの例はカーボンファイバーという材料です。この材料は日本製が良いと言われています。この材料は軽くて丈夫なので航空機や宇宙産業でよく使われています。日本製の最高の性能のカーボンファイバーをアメリカの戦闘機だけへ安く提供出来るのです。結果としてアメリカの戦闘機の性能がより高くなるのです。
このように日本の技術力を向上させれば、「日米安保条約」のお陰で日本の防衛と安全に貢献出来るのです。
単に優秀な工業製品を輸出して利潤が上がるという側面だけでは無いのです。続編ではもう少し違った分野の技術レベルを見たいと思います。(続く)