福島原発の4つの建屋の爆発で多量の放射性物質が炉心から空中へと、そして地中へと流れで出ました。その実害の大きな順に纏めると、次の3つになります。
(1)3月12日から15日にかけて起きた、建屋の水素爆発で空中に集中的に、多量に、飛散されたヨウソ131ヤセシウム137などを含む、炉心から漏れ出た微粒子の全量。
(2)水素爆発の巨大な衝撃で、炉心圧力容器や原子炉格納容器を貫通している多数の配管の貫通部分に、破損や割れが生じたのです。従って炉心へ注入した全ての水が炉心の放射性微粒子を懸濁しながら原子炉格納容器から流れ出たのです。それは現在でも連続的に流れ出ています。この水と共に流れ出た放射線微粉末の全量。この流出量は3月12日から現在まで、あまり減少する事なく続いています。
(3)炉心圧力容器から漏れ出る水蒸気によって建屋の外へ運び出される放射性微粒子の全量。これは少しずつ減少はしていますが、3月12日から現在まで続いています。
繰り返えますが、(1)は3月12日から15日まで集中的に放出されたもので、現在は止まっています。
(2)と(3)は少しずつ減少はしていますが、炉心への注水が続くかぎり止まりません。
さてそれでは上記のように炉心から流れ出た強烈な放射能を持った微粒子や微粉末は何処へ飛んで行って、何処に堆積しているのでしょうか?
(1)3月12日から15日の福島県、宮城県、茨城県の気象変化の最近の解析から2号機の爆発で多量に空中へ放散された放射性微粒子は、風向きが北西だったので30km以上離れた飯館村と浪江町の一部に集中的に降り注いだのです。空中高く舞い上がり、30km以内では上昇気流だったらしくて放射性微粒子は30km以内にはあまり降下しなかったのです。昨日、この事実がテレビで詳細に説明されていました。
2号炉以外の爆発の日時の風の解析も発表されていましたが、その日時には海へ向かって風が吹いていたので大部分は海へ飛んで行ったのです。そして少しの時間帯だけ茨城県へ向かって風が吹いていたので茨城県の農作物から放射能が検出されました。
結論は、飯館村と浪江町の一部に炉心からの多量の放射能が運悪く堆積しているのです。全く運が悪いとしか言いようがありません。飯館村と浪江町一部の人々へ強い同情を禁じ得ません。そしてこれからの避難生活でも、勇気をもって今後の生活を切り開くようにとお祈りいたします。
(2)現在でも、炉心に注水を続行しているので4つの原発の地下には9万トン以上の汚染水が溜まっているという発表が度々ありました。
しかし私はその9万トンの大部分は地震や水素爆発で割れた地下室の壁から地中へ漏れ出していると推測しています。理由は簡単です。炉心へ毎日、毎日、500トン前後の水を注水していながら地下室の水位が一向に上がったという発表が無いからです。あれだけ酷い地震と水素爆発が起きて建屋が吹き飛んだのに、地下室だけ割れ目も出来ず完全なまま残ったと考えるのは大間違いです。
さてここで幸運な現象が起きているのです。
強い放射能を持った多量の汚染水が地中へ沁み込んでいるのです。すると土壌が放射性微粉末を吸着して浄化してしまうのです。ですから地下水になった時にはかなり綺麗な水になっています。そして、その地下水が海へと流れ出ていると考えられます。海は意外にもあまり汚染されないのです。
従って推測の結論を言えば、炉心からの大部分の放射性微粉末は原発の敷地の下の土壌の中に蓄積されているのです。今後もこの現象が続き、蓄積量は増加しますが、海の汚染は意外に少ないと思います。
(3)炉心への注水によって出来た水蒸気は、現在でも建屋の外へ白い煙のように放出されています。この蒸気には放射能を持った微粒子が含まれています。しかし炉心の温度が少しずつ下がっているので放射能を持った微粒子の放出量は減少の傾向にあります。
この微粒子の行き先は、毎日、毎日、風向きが変わりますので、原発の周囲に満遍なく降り注ぎます。そして自然現象の法則通り原発に近ければ、近いほど降り注ぐ量が多くなります。
ですから半径20km以内は強制避難地域に指定されています。
以上のように考えて見ると将来起きるであろう放射能の問題もかなり明確に予測出来ます。
(1)飯館村と浪江町の一部の農地の表面にかなり強い放射性物質が堆積しているので、それを除去する大規模な作業が必要になっています。
(2)原発の汚染水を汲み上げて、浄化・冷却し、また炉心へ戻すという循環型冷却システムを一日でも早く完成して、これ以上汚染水が地中へ沁み出さないようにする必要があります。
(3)原子炉建屋を丈夫な合成樹脂の幕で覆い、放射性微粒子を持った水蒸気は大気中へ放散されないようにしなければなりません。
上記の(1)、(2)、(3)の工事は強い放射線のある原発敷地での作業であり、決して容易な作業ではないのです。
東京電力と関連会社の一層の努力を祈ります。そして作業に従事する人々の健康を心からお祈りいたします。