日本の各地を観光旅行をしてみますと、各地の自然の風景の美に感動することがしばしばあります。
何故、そして、どのようにして美しい風景が出来あがってきたのでしょうか?
日本の自然の景観は、簡単に言えば次の3つの原因が組合って出来あがったのです。
(1)海底の堆積岩が盛り上がり高い褶曲山脈の山々になる。
(2)海底が盛り上がって山になる間に火山が重なって噴火して富士山や八ヶ岳のような独立峰を形成する。噴火によってカルデラ湖が出来て、芦ノ湖や山中湖、河口湖、そして十和田湖、摩周湖、屈斜路湖などが出来る。
(3)山々に降った雨や雪が川となり海へ流れる途中に岩石や土壌を削り河岸段丘をつくる。また氷河が山々を削り山容を美しくする。
この3つの自然現象の間に樹木や草原が山や平野を覆い自然の風景を作って来たのです。
そして人間による農業や牧畜が自然の景観美を一層引き立てて来たのです。
さてそこで、日本の代表的な美しい風景の富士山と箱根についてその形成の歴史を少し詳しく調べてみました。
まず富士山は8万年位前から3つの大きな火山爆発で出来た山です。ですから三つの山が重なって居ます。古富士火山は約8万年前~約1万年、そして新富士火山は約1万年前以降に爆発しています。
富士山の溶岩には流れにくくするSiO2 の含有量が少ないので、溶岩がサラサラと麓まで流れて美しい流線型の山になりました。そして爆発後の陥没も非常に少ないのが特徴です。これが富士山の美しい形を作ったのです。
日本には、このような条件をそなえた火山は非常に少ないのです。
多くは箱根山のように陥没していまい複雑な形をしたカルデラ地形になっています。
富士山の3つの山は下の写真の青色、ピンク、褐色の3つの色に塗り分けて示してあります。つくば市にある地質標本館で撮ってきました。
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一方、隣の箱根はずうっと古く、16万年前の火山で出来ました。
富士山のように高い山でしたが、爆発のあと地下がガランドウになって山が陥没してしまい、カルデラ湖の芦の湖だけになったそうです。
そこで富士山と箱根の関連を歴史的に見てみましょう。
箱根の火山は60万年前から始まって10万年前には芦ノ湖や仙石原湖が出来ていたのです。仙石原湖は現在の湿生花園になっています。
ところが一方現在のような高い富士山は1万年前にやっと出来た新しい山なのです。ですから下の現在の写真にある富士山は存在していなかったのです。
当時の縄文時代の日本人が箱根に行っても西の方角には低い古富士火と愛鷹火山と小御岳火山が見えるだけです。むしろその向こうに高い褶曲山脈の南アルプスの山稜がくっきりと見えた筈です。
上が箱根の芦ノ湖から見た富士山と、下は三国峠から見た富士山です。昨年小生が撮った写真です。
上の写真にたいして、1万年前に新富士山ができた頃の絵を下に示します。
(出典:http://www.fujigoko.tv/mtfuji/vol1/fjhis02.html)
新富士山が出来る前は小さな古富士火山と愛鷹火山と小御岳火山が存在していただけなのです。
このように自然の景観の出来あがって来た歴史を地質学的に少し調べると面白いものです。
上のような予備知識を持って、箱根ジオパークのホームページを開くとその面白さが一段と深く理解出来るのです。
(箱根ジオパーク:http://www.geopark.jp/geopark/hakone/index.html)
ジオパークの面白さはその周辺の火山や地殻変動を少し詳しくしらべると理解できるのです。ですからジオパークは自分で地質学を調べるための糸口やヒントになっているのです。(続く)