原子力発電の問題になると多くの人々はすぐに感情的になります。
そのお互いの感情の激突をやわらげるのが人間愛です。お互いが、何故相手が感情的になっているかを深く理解する必要があるのです。お互いの心の痛みを理解しなければ和解は無理です。
原発反対派は以下の二つの理由で反対しているのです。
(1)原発の安全性が向上しても絶対に事故を起こさないという危険はゼロではない。このようにリスクがゼロで無いかぎり原発の運転は再開すべきではない。(この考え方を「ゼロリスク思考」と呼びます)。
(2)原発炉から出る使用済み核燃料棒の廃棄、処分方法が確立していない以上、放射能の危険負担を子孫へ10万年も背負わせることになる。
これに対して原発推進派は以下の理由で賛成しています。
(1)福島原発の爆発事故の教訓を取り入れて今後再稼働する原発の安全度は格段に向上している。ゼロリスク思考の愚かさを考えるべきです。
(2)原発を止めると火力発電の増加による地球温暖化や燃料輸入費用で日本社会が経済的に貧しくなるのです。
上記の4つの意見は定性的に考えるかぎりいずれも正しい意見です。しかし4つとも定量的な予測結果を何一つ示していません。ですから多くの人々はどちらにしようかと判断出来ません。
お互いに人間愛をもって何故そういう意見を主張するのか相手の感情を大切に考えてみましょう。
反対派はゼロリスクを求めています。全ての産業技術にゼロリスクを求めている訳ではありません。原発だけは事故が起きると、広範な放射能汚染と住民の移住をよぎなくさせるから原発だけにゼロリスクを求めているのです。これは当然な感情ではないでしょうか?
それに対して推進派はゼロリスク思考は愚かであると切り捨てるのです。愛情が感じられません。
推進派が何故、原発だけにゼロリスクを求める人が多いか、その心情に温かい気持ちを持つべきです。その温かい気持ちを始めに表明してから、原発推進の理由を相手の心を傷つけないように、じゅんじゅんと丁寧な分かりやすい文章で説明すべきです。
それと同じように反対派は原発推進派の感情を思って丁寧な言葉で意見を書くべきです。日本の経済を心配してくれて有難うという感謝の気持ちをまず書くべきです。
原発を急に撤廃すれは多くの人々が仕事を失って家族ともども路頭に迷うおそれがあると私共も知っています。ですからゆっくり何年間かかけて原発の数を減らすのも良い考えではないでしょうかと譲歩案も書いてみます。(実はこれが私の意見です)。
そして丁寧に質問しましょう。使用済核燃料棒の処理方法はどこまで開発されたのでしょうかと聞いてみます。
推進派の科学者や技術者はこの質問を専門が違うからと逃げてはいけません。自分の科学的知識を総動員して反対派が少しでも納得するように説明すべきです。
例えば使用済み核燃料棒を解体してセメントで固めて、ドラム缶に入れて、地下2km以上深い鉱山の廃坑あとを整備して貯蔵、管理するのも現実的な方法かも知れません。
ドラム缶が腐食して放射能漏れが無いか、毎月、定期的に点検するために貯蔵場所まで車で上り下りできるようななだらかな舗装道路を10kmくらい作り道路の管理もします。深い海に沈める方法は後の定期点検が出来ないので絶対に良い方法ではありません。
このように書いても反対派は納得しません。納得しない感情に寄り添って話し合いをするべきではないでしょうか。
そのようなお互いの態度が日本社会で力ずくで大問題に決着をつける不幸を少しでも和らげると信じています。
以上は下の参考資料に示した 北海道大学工学部教授、奈良林直さんの原発賛成論を読んだあとの私の感想文です。
挿絵は北海道の風景です。出典は、http://furano2008.blog95.fc2.com/ です。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。
後藤和弘(藤山杜人)
・
=== 以下は北海道大学工学部教授、奈良林直さんの原発賛成論の一部です。===
全文は、http://agora-web.jp/archives/1596998.htmlにあります。
(4)ゼロリスク思考の無意味さ
判決は「確実な科学的根拠に基づく想定は本来的に不可能である」と指摘する。完全なゼロリスクを求める考え方は科学技術の観点から不適切である。いかなる科学・技術も人間や環境に対してリスクを有するが、科学技術に基づく設計と日常の保全活動によってリスクを十分に低減させる。社会はその下がったリスクと恩恵とのバランスでリスクを受容している。
誤った判決が混乱をもたらしていいのか?
原子炉等規制法第43条の3の23にもとづいて原子炉に停止命令を出せるのは、原子力規制委員会だけである。各電力会社は、新規制基準の求める世界最高の安全水準を達成すべく、安全をすべてに優先させつつ、原子力発電所のたゆまぬ安全性向上と安定運転を目標にして膨大な予算をかけて対策を行っている。
筆者は原子力発電所の適切な利用を通じて、化石燃料の使用を一因とする地球温暖化や異常気象を防ぎ、燃料の輸入に伴う国富の海外への流出を防ぐことが、国民の幸せと人類の持続的発展に最も効果的な選択肢と考えている。事実関係の誤りの多い判決が、不必要な混乱を招くことは遺憾である。