1990年までの冷戦時代の国際対立は欧米に激しく対立するソ連と中国という2大勢力の抗争と簡単に理解出来ました。日本の外交はアメリカに従っていれば問題の無い簡単明瞭な時代でした。
しかし現在の世界は台頭する中国とアラブ諸国が連合し、勢力争いに加わり混迷を深くしています。国際対立の様相が複雑になり分かり難くなっています。
それを整理して明快にしてみようとするのがこの記事の目的です。戦争勃発の可能性についても少し考えてみたいと思います。
昨日、7つの先進国すなわちG7が会議をしてサミット首脳宣言を発表しました。下は日本経済新聞のウエブ版の写真です。
(写真の出典:http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS05015_V00C14A6MM8000/ )
今日の新聞にはその宣言の詳細が出ています。
分かり難いのですが、簡単に整理してしまうと先進7ケ国は政治的にはロシアと中国の横暴ぶりを激しく非難しています。
ロシアがクリミア半島を武力併合し、ウクライナの東部のドネツクス州とルガンクス州へ民兵を送り込み、政府軍との内戦が激しくしていることを強く非難しています。
そしてシリアではロシアの支援を受けたアサド大統領の軍隊が反対派を爆撃や地上攻撃をし、16万人を殺し、930万人以上を人道支援が必要な状況に置いたと具体的な数字を明記して非難しています。
そして中国による東シナ海と南シナ海の違法な横暴ぶりを非難しています。
このように見ると、もし万一世界大戦が勃発すると想像すると欧米諸国と日本の連合軍がロシアと中国の連合軍と激戦を繰り広げるという構図になりそうです。
上のように考えると対立は簡単で冷戦時代の欧米対ソ連・中国との抗争の図と変わりありません。
しかし現在の国際情勢は2つの要素が加わり非常に複雑なものに変化してしまったのです。
その一つは中国がアラブ諸国を抱えこんでいることです。そしても一つの要素は冷戦時代には無かった深く大きな経済の相互依存が出来てしまった事実です。
中国の北京で6月5日に22のアラブ諸国の外相会議が行われました。
習近平国家主席も演説し、アラブ諸国の経済的協力強化とシリア難民支援を約束したのです。
その詳細は、http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM0503O_V00C14A6FF2000/をご覧下さい。
中国の外交は22のアラブ諸国を自分の味方につけ、欧米へ対抗しようとしているのです。もともとアラブ諸国は反米や嫌米の国々ですからこの中国の政策は成功するでしょう。
さてもう一つの要素は米ソ冷戦時代には無かった巨大な経済の相互依存です。下に日本経済新聞が描いた図面を示します。
(図面の出典:http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS05015_V00C14A6MM8000/ )
上の図面の長所は実に明快に政治的対立と経済の相互経済依存の様子を描いていることです。しかし短所はアラブ諸国と中国の結びつきを無視していることです。そしてさらにASEAN諸国と中国との経済関係も無視しています。
日本では欧米諸国にとって都合の良いニュースだけが大きく報道されますが、それは日本人の客観的な判断に狂いを生じさせる危険があるのです。
経済的に世界第二位になった中国がロシアとさらに22のアラブ諸国と組んでいるのです。アメリカのオバマさんが劣勢に立たされ、シリアでも手を出せなかった理由をもっと大きな視野で考え、理解したほうが良いと思います。
日本は中国の大きな脅威に対して充分な対策を考えるべき時代になったのです。
さて最後に大きな戦争勃発の可能性について一言書いて置きたいと思います。
結論的に書けばその可能性は非常に少ないと思います。世界各国がこれだけ大きな経済相互依存をしている以上、戦争は自殺行為なのです。その事は主要国の首脳はよく分かっています。政治家だけでなく経済人が戦争反対なのです。最近日本の経団連会長の発言をみれば明らかです。
経済のグローバル化が大戦争回避の保険になっているのです。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。
後藤和弘(藤山杜人)