「第4回文蔵組落語会」。
枕では、コロナ禍での手持ちぶさたな日常を描きながら、本題に入ります。
碁がたき同士が、今日は「待った」なしで碁打ちはじめる。しばらくして形勢の悪い方が「待った」と言い出す。相手は待てないと言い、お互い「待て」、「待てない」と強情を張る。
あげくの果てに一方はおととしの暮れに金を貸したのを恩に着せ、返す日を延ばしてくれと言われた時に、「待った」してあげたではないかと言い出す。
これには相手も怒りだし、お互い「へぼ」「ざる」、「大へぼ」、「大ざる」とののしりあって喧嘩別れとなる。
そのうちに雨が何日も続き、碁が打てない腹いせに番頭や丁稚にあれこれ意見をするし、孫にまで当たる始末。碁会所に行くように勧められるが、皆強すぎて相手にしてもらえないのも承知しているので、ますますいらいらが募る。
その相手も碁を打ちたくてしょうがなく、菅笠をかぶって出かけ、店先を行ったり来たり。
旦那の方も笠をかぶって前を行ったり来たりするのに気づくが、照れくさくて中へ呼び入れることができない。
碁盤を持ってこさせ一人でパチン、パチンとわざとらしく大きな音を立てて、碁石を置き始める。
相手も音が気になって近づいてくるが、また通り越してしまう。どうにもたまならくなって、
「やいやい、へぼ!・・・へぼやい!」
「へぼと言ったな、ざるの大ざるめ!」
「大ざるだと。俺がざるかへぼでないか一番やるか?」
「ああ、やるとも」
中に入ってきて、碁を打ち始めるが、なぜか碁盤に雨のしずくが落ちてくる。いくら拭いても落ちるので、ひょいと見上げる。
旦那 「ああ、まだかぶり笠取らねえじゃねえか」。
下げは不思議と碁盤が濡れているので雨漏りかと思えば相手の笠だったという下げであるが、普通は座敷に雨具をかぶったまま上がったりはしない。
それに旦那もなぜ濡れていることにこだわるのか、それは「雨垂れ」が「涙」を暗喩しているから。
つまり、旦那は嬉しさで涙が潤んでいるのを雨漏りのせいにし、相手も笠を被りっぱなしで、同じように嬉しい顔を見せられなかったと。
代表的な人情噺として知られ、五代目柳家小さんや八代目桂文楽などが得意とした。
一見、単純な噺のようで、心中、複雑な二人のようすが、人情味豊かに描かれている。
また、碁敵ではなくても、無二の親友との間で、このような経験はありがちなことで、共感を呼ぶのでしょう。
幕前の、ゲストの柳家喬太郎師匠との掛け合い落語が面白い。
八代目林家正蔵一門の二代目橘家文蔵に入門。がっしりとした体格とドスが効いた威勢の良い口調で、「らくだ」の兄貴分や「天災」の八五郎など、豪快な「乱暴者」キャラを見事に演じる。落語界においても特異な存在感を放つのが、橘家文蔵だ。
「前座噺」と呼ばれるシンプルな構成の演目や、落語ファンにとってお馴染みの演目でも。破壊力抜群の人物描写と同時に、登場人物の心理を丁寧に繊細に表現する話芸と、随所に織り込まれるテンポの良いギャグで、観客を爆笑の渦に巻き込んでしまう。
2003(平成15)年からは、『BS笑点』に出演し、強面キャラを存分に発揮したパフォーマンスで人気を集める。
亡き師匠の得意ネタに挑む独演会『文蔵プレミアム』をはじめ、自ら座長・脚本・演出を務める『ボク達の鹿芝居』、『落語協会 大喜利王選手権』でプロデュース・司会を務めるなど、多才ぶりを発揮している。
そして、入船亭扇辰・柳家小せんと組み、フォークユニット「三K辰文舎(さんけいしんぶんしゃ)」では都内の落語会やライブハウスだけにとどまらず、全国各地の落語会で楽曲を披露している。
コロナ禍の2020年には、後援会「文蔵組」を結成すると同時に、いち早く業界初の無観客生配信落語会『文蔵組落語会』を全世界に配信。開始からの1か月で生配信の総視聴者数が延べ5,000人を記録し落語界に一石を投じ、オンライン配信落語会のパイオニアとしての地位を確立した。
(この項、「official Website」より)