おやじのつぶやき

おやじの日々の暮らしぶりや世の中の見聞きしたことへの思い

読書97「妖怪学講義」(菊地章太)講談社

2010-05-02 20:27:58 | つぶやき
 創立者・井上円了の伝統を受け継ぐ東洋大学。その大学での120年ぶりの「妖怪学」講義集です。講義するのは、菊地先生。
 現代から古代に遡りながら、妖怪・幽霊・怨霊・憑依等々、所詮神経作用に過ぎない(と井上先生)と見なされたこれらの諸現象、伝説、物語を図版・書籍を駆使して解説・講義しています。取り上げられた話題・内容は、それほど新しいものはありませんが、あらためて民間伝承との関わりの中で、怨霊や生き霊、幽霊を捉え直し、非科学的ということではすまされない、民衆や時代の精神に存在するあやかしの世界を比較文化論的に考察しています。
 円朝の「真景累が淵」にまつわる実証的な解説、「安珍清姫」の物語・・・。なぜ幽霊には足がないのか、何故幽霊は美女が多いのか、日本文化独特の血液占いなど、通俗的な話題も豊富で、興味深い。特に講義を受けての学生の感想とそれへの答えがおもしろかった。
 『共産党宣言』冒頭の有名な一文「ヨーロッパに幽霊が出る――共産主義という幽霊である」をつい思い出してしまいました。
 「妖怪」「幽霊」・・・、人はそれを操る?側も、それに対して恐怖を抱く、あるいは否定的・批判的な立場をとる側も、広く「心」のありよう、あるいは、文化のありように関わってくるのですね。
 してみると、インターネット上には、ありとあらゆる「妖怪」(魑魅魍魎)が跋扈している世界となっていますが、私達は、新たなこうした「妖怪」を自らの五感でできるだけ正確に認識し(踊らされず)、自らの判断・行動のよすがにしていけるかどうか、それが試されているような気がします。

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