作曲家の吉松隆さんが書いた「調性で読み解くクラシック」を読みました。吉松さんは、1952年生まれで、6つの交響曲や10の協奏曲などの管弦楽作品をはじめ多数の作品を作っています。また、NHK大河ドラマ「平清盛」(2012年)の音楽を担当するなど、テレビや映画音楽も多く手掛けている方です。
(目 次)
第1章 調性とは何か? ~メロディからハーモニーへ
第2章 楽器からみた調性 ~得意な調と苦手な調
第3章 科学的にみた調性 ~自然倍音から音階、平均律へ
第4章 調性の歴史 ~聖歌から機能和声へ
第5章 調性に関するエトセトラ ~東洋の調性から天体の音楽まで
第6章 それぞれの調性の特徴と名曲 ~長調、短調から微分音階まで
(感 想)
クラシック作品のタイトルに調性の表示があるのは、なぜだろうという疑問から読んだ本ですが、調性がその曲の曲調を決める上で、大事な役割を果たしているからだということを、わかりやすく記述してありました。
例えば、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番は、変ロ短調(♭が5つ)ですが、変ロ短調について『主音が♭系なので、弦楽器では響きが悪くほとんど使われない調。物凄く重たく暗い響きが特徴。ただし、ピアノでは黒鍵を多用する技巧的な曲に使われることがなくはない』と著者は解説しています。確かにこの名曲は、そのような特徴を備えています。第6章では、それぞれの調性の特徴と代表的な曲を挙げていて、鑑賞する際の手助けになります。
「自然倍音」について、『「音楽的な音」というのは、この「自然倍音」が豊かに含まれているわけで、耳には「ド」の音だけに聴こえても、その向こうには常にオクターヴ上の「ド」や「ソ」や「ミ」の音が鳴っていることになる』と記されています。だとすると、音域をカットしてしまうCDよりも自然なレコードの方が、音楽媒体として優れているのではないかと考えてしまいました。
ジャズやブルースで使われるブルーノート・スケールについても触れていますが、その中で『西洋クラシック音楽の長調・短調とは違った「和声感」を持ち、高度な「コード進行」や「転調」の可能性を秘めている。』と記しています。曲やアドリブの具体例を挙げるなど、せっかくなので、敷衍して記述してもらいたかった箇所です。
【チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番変ロ短調をマルタ・アルゲリッチのピアノで聴きました】
マルタ・アルゲリッチ(p)のライブ録音ですが、迫力が凄く、奔放な演奏。