「契約書においては,しばしば,設定者が譲渡担保権者の代理人として占有するとか,設定者は譲渡担保権者から賃借するとか,といった約定になっている。しかし,たとえば毎月賃料名目で一定額が設定者から譲渡担保権者に支払われていたとしても,実質的には被担保債権の利息であり,利息制限法の適用も受けるというべきであるから,契約書文言どおりに理解すべきではなく,設定者は自己の有する設定者留保権に基づいて,当然に目的物の利用ができると解すべきである。・・・
さらに,通説は,譲渡担保権者が,契約上の賃貸借契約の賃料不払を理由に賃貸借契約を解除し,設定者に対して目的物の引渡しを請求することは許されないとする。しかし,占有が譲渡担保権者に移転する形態の譲渡担保もありうるのだから,譲渡担保契約に付随した賃貸借契約等は,利息不払の際に非占有移転型の担保から占有移転型の担保に変換する特約として有効であり,契約解除・目的物引渡請求も認められると解すべきである。」(p316~317)
この最後のくだりを読んで、私は一瞬目を疑った。
著者は、かつて東大法学部で民法を教えていた学者であるが、譲渡担保の危険性について無自覚であるというだけにとどまらず、「通説」に逆らってまで「占有原則」の脱法を保護しようとしているのである。
どうやら、惨憺たる状況なのは取引社会だけでなく、学界の状況も似たようなもののようである。
さて、冒頭の設問への解答としては、以下のような構成が考えられる。
・古代ローマにおいて譲渡担保が禁止されていたのは、それが「占有原則」の脱法を狙ったものであり、「占有原則」を骨抜きにしてしまうからである。
・「占有原則」とは、・・・(定義を簡潔に書く。設立先例である「ウェルギニア伝承」にも触れる。)。
・「占有原則」の実定法上の反映=そのコロラリーである民法349条を指摘し、立法趣旨について説明する。
・譲渡担保が「占有原則」を蹂躙する具体例を、裁判手続外(第1ステージ)と裁判(執行)手続内(第2ステージ)のそれぞれについて説明する。後者においては、債権者平等原則や破産等包括執行手続の回避が図られていることを指摘する。
・判例・実務の対応(判例法で「合法」化していること、執行手続においては「別除権」として保護していることなど)を指摘する。
その上で、時間が余ったら、答案用紙の余白にこう書くとよいかもしれない。
「恐縮ですが、この問題を、民法の教官にも出してみてはいかがでしょうか?」
さらに,通説は,譲渡担保権者が,契約上の賃貸借契約の賃料不払を理由に賃貸借契約を解除し,設定者に対して目的物の引渡しを請求することは許されないとする。しかし,占有が譲渡担保権者に移転する形態の譲渡担保もありうるのだから,譲渡担保契約に付随した賃貸借契約等は,利息不払の際に非占有移転型の担保から占有移転型の担保に変換する特約として有効であり,契約解除・目的物引渡請求も認められると解すべきである。」(p316~317)
この最後のくだりを読んで、私は一瞬目を疑った。
著者は、かつて東大法学部で民法を教えていた学者であるが、譲渡担保の危険性について無自覚であるというだけにとどまらず、「通説」に逆らってまで「占有原則」の脱法を保護しようとしているのである。
どうやら、惨憺たる状況なのは取引社会だけでなく、学界の状況も似たようなもののようである。
さて、冒頭の設問への解答としては、以下のような構成が考えられる。
・古代ローマにおいて譲渡担保が禁止されていたのは、それが「占有原則」の脱法を狙ったものであり、「占有原則」を骨抜きにしてしまうからである。
・「占有原則」とは、・・・(定義を簡潔に書く。設立先例である「ウェルギニア伝承」にも触れる。)。
・「占有原則」の実定法上の反映=そのコロラリーである民法349条を指摘し、立法趣旨について説明する。
・譲渡担保が「占有原則」を蹂躙する具体例を、裁判手続外(第1ステージ)と裁判(執行)手続内(第2ステージ)のそれぞれについて説明する。後者においては、債権者平等原則や破産等包括執行手続の回避が図られていることを指摘する。
・判例・実務の対応(判例法で「合法」化していること、執行手続においては「別除権」として保護していることなど)を指摘する。
その上で、時間が余ったら、答案用紙の余白にこう書くとよいかもしれない。
「恐縮ですが、この問題を、民法の教官にも出してみてはいかがでしょうか?」