- チャイコフスキー: 『眠れる森の美女』よりワルツ〈ロシア〉
- D.リルバーン:アオテアロア〈ニュージーランド〉
- ワーグナー:歌劇『ローエングリン』第一幕への前奏曲〈ドイツ〉
- バルトーク:ルーマニア民俗舞曲(弦楽合奏版)〈ルーマニア〉
- マスネ:タイスの瞑想曲〈フランス〉 ヴァイオリン:西江辰郎(NJPコンサートマスター)
- マスカーニ:『カヴァレリア・ルスティカーナ』より間奏曲〈イタリア〉オルガン付
- マルケス:ダンソン・ヌメロ・ドス(Danzón No. 2)〈メキシコ〉
- コープランド:クワイエット・シティ〈アメリカ〉イングリッシュホルン:森明子(NJPオーボエ&イングリッシュホルン奏者) トランペット:山川永太郎(NJP首席トランペット奏者)
- 井上道義:ミュージカルオペラ『降福からの道』二幕より 「降伏は幸福だ」〈日本〉
- エルガー:「威風堂々」〈イギリス〉オルガン付
今年いっぱいで引退を宣言している井上道義氏の指揮・おしゃべりによるコンサート第2弾(第1弾は昨年9月17日の公演)。
「世界漫遊記」という表題が示すとおり、世界各国の音楽10曲が演奏される。
なんとまあ、みちよし先生のしゃべること!
今回のコンサートは、半分以上の時間がおしゃべりの時間であり、前半が終わった時点で2時間近く経過していたと思う。
興味深い話ばかりで、挙げて行くとキリがないが、いくつかピックアップしてみる(もしかすると記憶違いの部分があるかもしれない)。
① バレエの動きと指揮者の動きはまるで違う
1曲目は、バレエ音楽「眠りの森の美女」よりワルツ。
みちよし先生は、少年時代に鎌倉でバレエを習っており、そのために指揮をしているときに、最初は「音楽に乗る」ような感じになったそうである。
だが、指揮者は「音楽の1秒前を行く」必要があるため、バレエの動きは指揮を阻害することになるそうだ。
② イタリアのオーケストラ団員との付き合い方
3曲目は、歌劇「ローエングリン」より第1幕への前奏曲。
というのも、彼ら/彼女らは、基本的に指揮者の言うことを聞かず、練習中も私語ばかりするからである。
ところが、クライバーはそれをとがめたりしない。
怪訝に思ったみちよし先生は、こう言ったそうである。
「イタリアでは、やっぱり、ムーティーのように、『警官のように』厳しくやった方がいいんじゃないですか?」
これにクライバーンは、こう答えた。
「いや、私は、オーケストラの団員とは、友達の関係でいたいんだよ」
③ 死は怖くない
みちよし先生は、コンサートの間に何度か、「私はまもなく”死にます”(言葉ではなく、ジェスチャーで)が、全然怖くありません」と語った。
その理由は、話を聞いているとよく分かる。
初っ端から、先生が生まれた1946年、「すみだトリフォニーホール」近辺は焼け野原であり、その前に空襲でたくさんの人が亡くなっていたという話が出た。
また、9曲目のミュージカルオペラ『降福からの道』二幕より 「降伏は幸福だ」では、実の父親がアメリカ軍の中尉であったことや、両親が移住したフィリピンでは戦争で多くの人が亡くなったことなどが語られた。
ご自身の病気(かつて喉頭がんを発症されたそうである)のことについては
触れられなかったが、このことも、「死は怖くない」という理由の一つなのだろう。
さて、本当のファイナル:12月30日のチケットは、争奪戦になりそうである。