「【第1幕】村一番の人気の男エルヴィーノはアミーナと結婚することになっているが、かつてエルヴィーノと交際していたリーザも、まだ彼を愛している。そのリーザに好意を抱くアレッシオのリードで、村人たちが結婚を祝う歌を合唱する。エルヴィーノが到着して、家も財産もこの結婚に捧げるという誓約書に署名し、アミーナへ母の指輪を贈る。
その時、ロドルフォと名乗る男が村を訪れ、花嫁に目を留める。リーザは自分の宿への宿泊を勧める。ロドルフォはこの村では老いた伯爵が亡くなってその息子も行方不明だと聞かされ、夜な夜な現れる白い幽霊の話をされるが、一笑に付す。
夜、ロドルフォが泊まる部屋をリーザが訪れ、彼こそ伯爵の息子だと言い当て、誘惑する。そこへ突然アミーナが現れる。アミーナは実は夢遊病で、無意識のままロドルフォのベッドに入り寝てしまう。新伯爵を祝おうと集まった村人たちは、伯爵のベッドにいるアミーナを見つけて驚く。リーザがエルヴィーノにアミーナの不義を告げる。」
その時、ロドルフォと名乗る男が村を訪れ、花嫁に目を留める。リーザは自分の宿への宿泊を勧める。ロドルフォはこの村では老いた伯爵が亡くなってその息子も行方不明だと聞かされ、夜な夜な現れる白い幽霊の話をされるが、一笑に付す。
夜、ロドルフォが泊まる部屋をリーザが訪れ、彼こそ伯爵の息子だと言い当て、誘惑する。そこへ突然アミーナが現れる。アミーナは実は夢遊病で、無意識のままロドルフォのベッドに入り寝てしまう。新伯爵を祝おうと集まった村人たちは、伯爵のベッドにいるアミーナを見つけて驚く。リーザがエルヴィーノにアミーナの不義を告げる。」
主人公アミーナは、婚約したその夜、他の男のベッドで発見され、不義を疑われてしまう。
当時、「夢遊病」(睡眠時遊行症)の原因は解明されていなかったから、これはやむを得ない状況なのかもしれない。
精神科医の香山リカさんは、アミーナの「夢遊病」の原因は、実の母を亡くし養母のもとで育ったという「逆境的小児期体験」にあるのではないかと指摘する(公演パンフレットp33)。
「逆境的小児期体験」は、大人になってからはうつ病や依存症、多重人格などを惹き起こすという。
「多重人格」で思い出すのは、「ニーベルングの指環」のジークフリートである。
「【第1幕】
ライン川近くのギービヒ家の長男グンターは、異父弟ハーゲンに一家が栄える知恵を聞きます。ハーゲンは、グンターにブリュンヒルデを妻として迎えることを勧めます。
何も知らずにギービヒ家にやってきたジークフリートは忘れ薬を飲まされ、グンターの妹グートルーネに求婚することになります。そこでグンターは、ブリュンヒルデを自分の嫁にできればという条件を出しました。
ジークフリートは「隠れ頭巾」を使ってグンターに変装し、炎を越えてブリュンヒルデのもとに現れ、ついには彼女の指環をも奪い取ったのでした。」
ライン川近くのギービヒ家の長男グンターは、異父弟ハーゲンに一家が栄える知恵を聞きます。ハーゲンは、グンターにブリュンヒルデを妻として迎えることを勧めます。
何も知らずにギービヒ家にやってきたジークフリートは忘れ薬を飲まされ、グンターの妹グートルーネに求婚することになります。そこでグンターは、ブリュンヒルデを自分の嫁にできればという条件を出しました。
ジークフリートは「隠れ頭巾」を使ってグンターに変装し、炎を越えてブリュンヒルデのもとに現れ、ついには彼女の指環をも奪い取ったのでした。」
ジークフリートも、ブリュンヒルデという妻を持ちながら、「忘れ薬」を飲まされて、グートルーネに求婚したばかりでなく、ブリュンヒルデから指環を奪い取ってしまった。
そういえば、ジークフリートも、幼いころ両親を亡くし、ミーメというとんでもない男に養育されたのだから、むしろアミーナよりも深刻な「逆境的小児期体験」を抱えていたはずである。
その彼が、「夢遊病」ではなく、「忘れ薬」を飲まされて事に及んだのだから、情状としてはアミーナより軽いと見るべきではないだろうか?
・・・などと考える秋の夕べであった。