本を読むと、新しい情報とか知見だとか考え方を得ることができる
だがそれ故に自分の頭で考えることをしなくなる
と警鐘を鳴らした人もいる(多分、ショーペンハウアー)
でも実感からすると、確かに影響は受けるけれども
本を読むことで得られる利益は何ものにも代えがたい
今ワクワク感を覚えて先へ先へと進みたがっている本がある
はやく読み終えたいと思う反面、いつまでもこの状態に留まっていたいとも思う
その本が「フィンランドの高校生が学んでいる 人生を変える教養」岩竹美加子
数年前、「あなた自身の社会」スウェーデンの中学校の教科書を読んで衝撃を覚えたが
北欧の社会の思想・価値観から導かれる教育というのは、随分日本のそれと違っている
端的に言えば、北欧のそれは「確固とした大人を育てる教育」
日本のそれは「従順な労働者を育てる教育」と言えるかもしれない
そして今読んでいる最中のこの本も、やはりしっかりした大人を育てるようになっている
一番衝撃的で興味深かかったのは、授業の選択科目の中に「人生観の知識」
と名付けられたものがあることで、この抽象的な名前の授業は
いろんな視点から物事を捉える訓練がなされる
現在のフィンランドは基本キリスト教(ルター派)が多く
信者たちはその授業を受けることができる
それ以外の人たちは(移民も他の宗教の信者)この「人生観の知識」
を受けることになる
この授業内容が凄い
日本では全く考えられない内容だ
フォンランドの教育庁は「人生観の知識」についてこう述べている
人生観の知識の出発点になるのは、既に用意されたカリキュラムではなく、生徒が生きている世界とその現象である。
自分の人生観をアクティブに形成、その根拠を内省し、それに影響を与えているファクターを分別する。
同時に、政治的、科学的、哲学的、思想的、ポピュラーカルチャーや宗教など、様々な一般的な世界観を考える。
人生観の知識は、多分野で、人類学、哲学、心理学、生物学、地理学、歴史、文化、アート、教育学、社会学、メディア、研究、ジェンダー研究などから得られる視点を活用する。
生徒は、全体を掴み、現象の間のつながりを理解し、幅広く批判的な思考を発展させていく。
また、一般教養、判断能力、他人の尊重、会話、聞くこと、自分の表現を強化する。
人権に目指し、持続可能な将来の建設。社会的な存在として人を理解し、
周りの現実を批判的に検証する能力、自由で平等、アクティブで倫理的な社会の一員として生きることが期待される
凄いと実感するのは、この抽象的な目標が現実に有効なものとなるような授業が実践されていることだ
こうしたものを見ると、ヨーロッパの社会は思想が現実社会に実体化されると思えてならない
それを日本と比べると、かつて明治維新で海外経験を積んだ人びとは(福沢諭吉など)
海外の思想と技術を学んで一見こなしきっていると見える日本だが、思想が社会化されておらず
表面的な技術だけが身についているに過ぎないとしている
この本、現在の読んだところは半分程度
いろんな視点からとりあげられているので、一つ一つ驚きを覚えるが
実感として思うのは、読むことで必然的に生まれる何かと比較する
(例えば日本と)ということは、本当に刺激となるということだ
きっと読んだ人はまず日本との違いに驚く
すると漫然と受け入れていた日本の教育はこれで良いのか?
と考えるようになる
そして自分の頭で考えて、日本の現状に合わせて、あるいはあるべき姿を目指して
どのような教育(方法)が良いかを考えることになる
こうした行動のきっかけとなる刺激的なこの本
個人的にはこうした本こそがベストセラーになれば良いと思うが
この本を求められる社会は、実は何かが不足していることの反映なのだろうか?