最初の1行は決まっていた
しかし、そこから先にはなかなか進まなかった
そんなことが続いて数年
とりあえず最後まで行くことに意味があると思い直して
重い腰を上げて書き終えたメルヘン「セミと風鈴」
「100万回生きた猫」と同じテーマとなるはずだった
しかし、書き始めると少しずつストーリーは変わっていった
あまり説教臭くなるのは避けたいと思ったせいか
そして説明的な部分を省いたせいか
ぼんやりした印象でしかない
テーマが何だったのかさえ不明確
しかし、今のところはこのままで
いつか変更するかもしれない
ただこれを書いているときは
なかなか楽しい時間だった
先に行き詰まって困ったこともあったが
あれこれ考えるのは頭の良い訓練に生る
さて本日仕上げた「メルヘン セミと風鈴」
セミは少し悔しかった
今も小さな女の子のつぶきが耳に残っている
「涼しそうな風鈴の音。とても気持ちがいいわ。でもセミたちはなんて賑やかでうるさいこと、どうしてあんなに必死に泣き続けているのかしら?」
その林道の中腹には小さな古びた休憩所があった。旅人は疲れた体を休め、眠りについたり、時には食事をしたが、その軒先に風鈴が吊るしてあった。
風鈴は日が傾き始めた頃、チリンチリンとなった。
「ほう、いい音だ。」
年老いた旅人がつぶやく。
セミはそのつぶやきを耳にした。
セミは「羨ましいなあ。自分の鳴き声があのように褒められるようになりたいものだ」
最初は何気なく思っただけだった。が、そのうちに褒めてもらえる鳴き方をすることがとても大事な、
もしかしたら生きているうちで一番大切なことではないかとも思うようになった。そして、そのためにはどんな努力もいとわないと考えるようになった。
それからは前にもまして、体全体を震わして大きなで声で鳴くのだった。
朝から晩までセミは鳴き続けた。
近くの木に止まったセミが助言した。「そんなずっと必死に鳴いてばかりじゃ命がもたないよ!」
セミは頷いたが、全力で鳴くことをやめることはしなかった。
美しく鳴く、ただひたすらそれを求めて。
来る日も来る日もセミは鳴き続けた。
セミの一生と言う時間をはるかに超えて鳴き続けた。親切に助言したセミは少し前に木からポトリと音を立てて落ちて今はその亡骸を蟻たちが運ぼうとしている。
しかし、そのセミは相変わらず朝から晩まで泣き続けるのだった。ところが林道の休憩所から聞こえる声は風鈴の涼やかな音を褒める言葉ばかり、蝉の声については何の言葉を発せられなかった。
鳴き方がまずいのか?音が大きすぎるのか?音の高さを工夫することはできるのだろうか?セミは考えついた全てのことを試みた。しかし、やはり旅人にはただ騒がしいセミの鳴き声にしか聞こえなかった。いやそんなことすら感じてもらえなかったのかもしれない。
そんなある日の午後、遠くに見えた雲が急に黒っぽく変わり、あたり一面が暗くなった。冷たい風も吹き始めた。突然、激しい雨が降り始めた。雷もなり始めて、はじめは遠く聞こえたのが徐々に近づいて来ている。旅人は先を争って家に飛び込んだ。ピカっと光った瞬間、ガシャーン!と大きな音。近くに雷が落ちたようだ。「クワバラ、クワバラ!」旅人は口々に呪文を唱える。
軒先に吊るされた風鈴は強い風にさらされて右に左に大きく揺れている。間髪おかず金属音を鳴らし続ける。チリ、チリ、チリリーン。チリ、チリ、チリリーン。「うるさいな!」旅人の中の一人がつぶやいた。とその瞬間、風鈴を吊るしていた紐が切れた。風鈴が落ちたところは少しばかり坂になっていた。おまけに風に押されて風鈴はころころと転がっていった。豪雨と雷の中、誰も風鈴を取りに行こうとはしない。コロコロ、コロコロ、風鈴はしばらくすると見えないところまで転がっていき、ようやく草むらに入って止まった。
風鈴はそこで人々の記憶の中から消えてしまった。かつて休憩所にあったことも、その涼やかな音も。
雨が上がった。
ホッとしたような雰囲気が漂い、旅人たちは各々それぞれの方向に歩き始めた。
しばらくして雨を避けていたセミは休憩所が見えて、人々の会話が聞こえるいつものところまで戻っていつもと同じように鳴き始めた。
以前と同じように来る日も来る日も。
しかし何かが前とは違っていた。風鈴を褒める声が聞こえない。セミの目にも風鈴は見えなかった。
セミは少し寂しかった。
やがて多くのセミが生まれ死んでいく季節も終わりを告げようとしていた。
ずっと鳴き続けてきたセミもとうとう声が小さくなってきた。チチチ、チチ、懸命に鳴こうとしてももう体がいうことをきかなくなっている。「あと少し、、、」意識が遠くなりそうな瞬間、「あっ、セミの声。すごい今まで鳴いていたんだ。頑張ったね」小さな女の子の声が耳に入った。その声をセミは木から落ちながら聞いたような気がした。
これで少し勢いがついたかもしれない
ずっと頭に引掛っていたネタでもう少し創作してみようかな
しかし、そこから先にはなかなか進まなかった
そんなことが続いて数年
とりあえず最後まで行くことに意味があると思い直して
重い腰を上げて書き終えたメルヘン「セミと風鈴」
「100万回生きた猫」と同じテーマとなるはずだった
しかし、書き始めると少しずつストーリーは変わっていった
あまり説教臭くなるのは避けたいと思ったせいか
そして説明的な部分を省いたせいか
ぼんやりした印象でしかない
テーマが何だったのかさえ不明確
しかし、今のところはこのままで
いつか変更するかもしれない
ただこれを書いているときは
なかなか楽しい時間だった
先に行き詰まって困ったこともあったが
あれこれ考えるのは頭の良い訓練に生る
さて本日仕上げた「メルヘン セミと風鈴」
セミは少し悔しかった
今も小さな女の子のつぶきが耳に残っている
「涼しそうな風鈴の音。とても気持ちがいいわ。でもセミたちはなんて賑やかでうるさいこと、どうしてあんなに必死に泣き続けているのかしら?」
その林道の中腹には小さな古びた休憩所があった。旅人は疲れた体を休め、眠りについたり、時には食事をしたが、その軒先に風鈴が吊るしてあった。
風鈴は日が傾き始めた頃、チリンチリンとなった。
「ほう、いい音だ。」
年老いた旅人がつぶやく。
セミはそのつぶやきを耳にした。
セミは「羨ましいなあ。自分の鳴き声があのように褒められるようになりたいものだ」
最初は何気なく思っただけだった。が、そのうちに褒めてもらえる鳴き方をすることがとても大事な、
もしかしたら生きているうちで一番大切なことではないかとも思うようになった。そして、そのためにはどんな努力もいとわないと考えるようになった。
それからは前にもまして、体全体を震わして大きなで声で鳴くのだった。
朝から晩までセミは鳴き続けた。
近くの木に止まったセミが助言した。「そんなずっと必死に鳴いてばかりじゃ命がもたないよ!」
セミは頷いたが、全力で鳴くことをやめることはしなかった。
美しく鳴く、ただひたすらそれを求めて。
来る日も来る日もセミは鳴き続けた。
セミの一生と言う時間をはるかに超えて鳴き続けた。親切に助言したセミは少し前に木からポトリと音を立てて落ちて今はその亡骸を蟻たちが運ぼうとしている。
しかし、そのセミは相変わらず朝から晩まで泣き続けるのだった。ところが林道の休憩所から聞こえる声は風鈴の涼やかな音を褒める言葉ばかり、蝉の声については何の言葉を発せられなかった。
鳴き方がまずいのか?音が大きすぎるのか?音の高さを工夫することはできるのだろうか?セミは考えついた全てのことを試みた。しかし、やはり旅人にはただ騒がしいセミの鳴き声にしか聞こえなかった。いやそんなことすら感じてもらえなかったのかもしれない。
そんなある日の午後、遠くに見えた雲が急に黒っぽく変わり、あたり一面が暗くなった。冷たい風も吹き始めた。突然、激しい雨が降り始めた。雷もなり始めて、はじめは遠く聞こえたのが徐々に近づいて来ている。旅人は先を争って家に飛び込んだ。ピカっと光った瞬間、ガシャーン!と大きな音。近くに雷が落ちたようだ。「クワバラ、クワバラ!」旅人は口々に呪文を唱える。
軒先に吊るされた風鈴は強い風にさらされて右に左に大きく揺れている。間髪おかず金属音を鳴らし続ける。チリ、チリ、チリリーン。チリ、チリ、チリリーン。「うるさいな!」旅人の中の一人がつぶやいた。とその瞬間、風鈴を吊るしていた紐が切れた。風鈴が落ちたところは少しばかり坂になっていた。おまけに風に押されて風鈴はころころと転がっていった。豪雨と雷の中、誰も風鈴を取りに行こうとはしない。コロコロ、コロコロ、風鈴はしばらくすると見えないところまで転がっていき、ようやく草むらに入って止まった。
風鈴はそこで人々の記憶の中から消えてしまった。かつて休憩所にあったことも、その涼やかな音も。
雨が上がった。
ホッとしたような雰囲気が漂い、旅人たちは各々それぞれの方向に歩き始めた。
しばらくして雨を避けていたセミは休憩所が見えて、人々の会話が聞こえるいつものところまで戻っていつもと同じように鳴き始めた。
以前と同じように来る日も来る日も。
しかし何かが前とは違っていた。風鈴を褒める声が聞こえない。セミの目にも風鈴は見えなかった。
セミは少し寂しかった。
やがて多くのセミが生まれ死んでいく季節も終わりを告げようとしていた。
ずっと鳴き続けてきたセミもとうとう声が小さくなってきた。チチチ、チチ、懸命に鳴こうとしてももう体がいうことをきかなくなっている。「あと少し、、、」意識が遠くなりそうな瞬間、「あっ、セミの声。すごい今まで鳴いていたんだ。頑張ったね」小さな女の子の声が耳に入った。その声をセミは木から落ちながら聞いたような気がした。
これで少し勢いがついたかもしれない
ずっと頭に引掛っていたネタでもう少し創作してみようかな