明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



アダージョの表紙を制作していたとき、誰かにかこつけ、何か怪異なものを作りたいと泉鏡花や小泉八雲などを提案したものだが、なかなかそうもいかず、かろうじて円谷英二で大蛸を登場させたが、私のイメージするものとは少々傾向が違い、そもそも円谷にならい、瀬戸内海から届いたホンモノを使ったのであった。柳田國男が決まった時は、ついに河童だ、と一瞬色めき立ったが、背景が都内は牛込柳町では水っ気もなく、いかんともしがたかった。 怪異といえば、東雅夫さん監修のちくま文庫、文豪怪談傑作選である。文豪怪談とは、またなんてことをしてくれた、という面白い企画で、本日のような寒い日には、布団から出ず、手元の灯かりだけで読むに限る。 さらになんといっても素晴らしいのが金井田英津子氏の表紙画である。柳田國男集では烏天狗が描かれているが、直接描かずとも、なんともいえない気配を感じさせてくれる。 金井田作品はパロル舎の『冥途』や『夢十夜』などですでに親しんでいたが、これらの怪談シリーズは実に怖い。明治篇の『夢魔は蠢く』なども不気味でたまらないのだ。私の辞書に載っていない、未知の暗がりからこんな世界を持ってこられると、ただ見惚れるばかりである。独特の線と陰。とくに陰は、ベタ塗りのはずが何か潜んでいるようで、目を凝らさずにはいられないのである。

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