明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



私が今まで見た人の顔で最も感銘を受けたといえば、84年に最初で最後の来日を果たしたブルースミュージシャンの『ジョン・リー・フッカー』の御面相であろう。これはもうスペシャルとしかいいようがない顔であった。若い頃の写真を見ても貫禄十分であるが、時を経てさらに大変なことになっていた。 来日ブルースマンの中には、普段は自動車修理工などをやっていて、来日したとたん本国との待遇の違いに有頂天になり、張り切りすぎてツアーの後半は声をからして、などという人もいるようだが、ジョン・リーはというと、坐ったままあたりを睥睨し、熱狂する観客にまったく興味を示さず、あたかも餌をくれろと大騒ぎの池の鯉を眺めるお大尽の如し。しかし会場の床は物凄いビートで揺れっぱなしというライブであった。40歳を過ぎたら自分の顔に責任を持て、などというが、はたしてどんなものであろう。フィリピンパブのフィリピン娘に「苦労ガ足リナインジャナイ?」と評された私にはまったく自信がない。  ところで出演料がかからないから、とはいえ、K本の常連客の中から、キャスティングを、などというと、あまりに安易に思われようが、これが妥協した揚句の、というわけで全くない。下町が誇る煮込みの名店には、それなりの顔が集まってくるということであろう。もっとも作中、貫禄に物をいわせ、というような大人物は一切登場しないことは、付け加えておく。

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