明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



懐から怪人二十面相のマスクを取り出す江戸川乱歩は随分前に作ったが、ガラケーで撮っただけであった。そこで先日撮影したのだが、このマスクのせいで背景が決まらない。怪人二十面相といっても、元はサーカス芸人の遠藤平吉で、人を殺すどころか血も嫌い。あげくに少年探偵団の諸君にやっつけられる始末である。よって『陰獣』のように妖しくするわけにもいかない。これは昔観た夢によって作った。 今は立教大学が管理している乱歩邸の応接間で乱歩が机に向かっている。にもかかわらず、編集者、研究者が大勢で飲み会をやっており、何が楽しいんだか盛り上がっている。そんな中の一人が、乱歩がこっそり懐から二十面相のマスクを取り出すのを見つけた。空気は一変し騒然となる一同。「先生、それだけはお止め下さい!」。老人である乱歩を羽交い締めにし、外部にもれないようカーテンを閉め、床に落ちたマスクを蹴飛ばし乱歩から遠ざけたりしている。そんな中、先生の決心がお固いなら良いではないか、と口をはさんだ男が別室に連れて行かれ袋叩きにされる。私はどさくさに紛れて乱歩邸を後にしたが、池袋駅になかなかたどり着かず苦しむ。 夢の中でも私は方向音痴なのであった。私の夢の特徴は、キャストやストーリーがめちゃくちゃでも、私は私がしそうなこと、いいそうなことしかいわない。そもそもめったに夢は見ないのだが。 最近はほとんど毎日書いているこの駄文もたまには良いことがある。4行目あたりで乱歩の背景を思い付いた。

銀座青木画廊「ピクトリアリズム展Ⅲ』5月12日(土)〜5月25日(金)20日(日休)

2016年『深川の人形作家 石塚公昭の世界』 youtubeより

『タウン誌深川』“明日できること今日はせず”連載7回「“画狂老人葛飾北斎”」

HP

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