明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



今月2日Sから電話が来た。数日前、世をはかなんだ調メールが着ていたので気になっていたのだが、訊いてみると飼ってた猫に自分の腕の中で死なれショックを受けているという。さらにそれがきっかけに自分の中で蓋をしていたことが一挙に出てしまったといい、すっかりしょげかえっている。2日のブログに書いたが、その話しを聞いている最中、アイデアだけであった猫を虎にすることを決めた。こういうことは偶然ではない、と必ず乗ることにしている。私の作った虎は、きっとご利益あるぞ、待ってろ、と伝えた。 昨日ひとしきり猫を撮らせてもらい、その上御馳走にまでなってしまった。美味しい焼酎をいただき帰路を気持ち良く歩いていると、Sから電話、今から行って良いか、という。もう11時近かったろう。帰って早くトラの虎化に取りかかりたかったがしかたがない。待ち合わせて朝までやっているカラオケへ。カラオケのビルの一階のなか卯のメニューを酔っぱらってヨロヨロしながら見つめるジイさん。葛飾北斎の身体役のジイさんである。ついでにいえば拙著で火灯もしの翁こと柳田國男の手足をやってもらった。本人とは真反対の、偉い人物にばかりに起用してしまったが、一緒にエレベーターに乗ろうとするので放りだす。「ホーム!」。飲み放題コースで結局朝までSの話しを訊いてお互い1曲だけ歌って解散となった。一眠りして虎に取りかかろうとしたらカードが認識されない。これには参った。Sに「俺に何かなすりつけて帰らなかったか?」「おかげで厄が落ちた」。「馬鹿ヤロー」。 明日再撮ということになってしまった。こういう場合の私は悔しいので、失敗して良かった、と思える所まで必ず持って行く。頭の中には竹林に満月の『猛虎図』がすでに出来上がっている。

銀座青木画廊「ピクトリアリズム展Ⅲ』5月12日(土)〜5月25日(金)20日(日休)

2016年『深川の人形作家 石塚公昭の世界』 youtubeより

『タウン誌深川』“明日できること今日はせず”連載7回「“画狂老人葛飾北斎”」

HP

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