明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



『蛸と画狂老人北斎』で実物の蛸を扱い、口を尖らせたタコの八ちゃんのイメージは誰が創始したのかは知らないが、いかに日本人が蛸をアレンジ擬人化していたかを知った。正面からすれば首筋あたりにある排水口を口に見立て、目玉をその上に持って来てタコの八ちゃん調にしている。刑死人の首だかを持ち帰って、なんて話しを聞いた北斎ゆえ、当然蛸を解剖学的にも研究したに違いないが、北斎としても、蛸の八ちゃんのイメージに準じないと春画『蛸と海女』は成立しなかった訳である。 虎と猫は違う。虎は猫背ではないし。虎を見たことがない日本人の多くが、本来瞳孔が丸い虎の目を猫のようにキャッツアイ型に描いている。趣旨からいえば、私もそれに準じなければならない。というより私がレンズを向けているのは猫である。大正時代の写真誌に、猫の瞳孔をノギスで計り露出計がわりにする、というお笑いコラムがあったのを思い出した。 本日は一昨日と違い余裕があった。撮る必要がないカットも決めていたし。猫を虎にする場合、すでに無茶な改造を施しているのだから、わざとらしいくらい、古典的伝統的虎図にしようと考えている。今日は先日と違い猫に警戒されていないのが判る。私は元々犬猫には警戒されないタイプである。それにしても、ご主人が仕事で別な部屋にいる間、ドアの前でそちらを向き、こちらに背を向けぴくりとも動かず。岸壁の母の背中を眺めるが如し。その間ただ待つことしか出来ず。それでも目の前20センチで表情も撮れた。

銀座青木画廊「ピクトリアリズム展Ⅲ』5月12日(土)〜5月25日(金)20日(日休)

2016年『深川の人形作家 石塚公昭の世界』 youtubeより

『タウン誌深川』“明日できること今日はせず”連載7回「“画狂老人葛飾北斎”」

HP

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