明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



懐から怪人二十面相の仮面を出す乱歩の背景に思い付いたのが、仮面を着けていない二十面相であった。しかし背景の色を案配しているうち、なんだか思っていたより格好良くなって来て、二十面相だけで良いような気になって来た。西洋紳士風に成りがちだった二十面相を、悪党ヅラの、いわれてみれば本名遠藤平吉に見えなくもないだろう。イテテの遠藤は幸吉だが。これは旧いプロレスファンにしか通じない。乱歩をもう一度撮り直して考えることにする。
私の性格だと、陰影を出さないなら以後すべてその手法で、と本来すっかり転向したいところであったが、そこはやはり絵画と違い、手段が写真だけあって陰影を演出する魅力は抗し難い。始めて3作目であったか、明治の寄席を再現し、その前に立たせる円朝に、寄席内部からの光を当てるべきか悩んだ。結局始めたばかりだというのに我慢ができずに円朝に光を当てた。しかし新版画の川瀬巴水を見ると、屋外風景、室内の人物、対象により、自分の都合で陰影など描き分けている。であるから風景と人物では別人の作品のようである。私も臨機応変にそうすることにした。我慢して無理するのは身体に悪い。 特に今回の個展は趣味も意見も合わないグループ展の如き様相を呈しそうである。そして誰だ虎なんか出品した奴は!これは我々の趣旨と違うじゃないか。なんていわれそうである。そういえば昔、クラシックカメラ愛好家のグループ展に永井荷風のモノクロ写真を出品したら、このグループ展は新作で、という趣旨なのに昔の写真は反則じゃないか!とクレームが来たと責任者に聞いた。


銀座青木画廊「ピクトリアリズム展Ⅲ』5月12日(土)〜5月25日(金)20日(日休)

2016年『深川の人形作家 石塚公昭の世界』 youtubeより

『タウン誌深川』“明日できること今日はせず”連載7回「“画狂老人葛飾北斎”」

HP

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