明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



三島由紀夫が魚屋やヤクザや体操選手、その他いかにも三島好みの、つまり文学とは無縁で逞しい人物になりきり、恍惚として死んでいるところを篠山紀信に撮影させた『男の死』はあの凄絶な死に世間が震撼している所に放たれる二の矢となるはずで、そこでザマアミロ、となる事を三島は想定していただろう。事件の一週間前に、森田必勝を伴い作品のチェックに篠山の事務所を訪れた時、あんな嬉しそうな三島さんは見た事がない、と企画者の内藤三津子さんに伺った。 奥さんの反対で未刊となってしまったが、私はその事実を知らず、三島が様々な状態で死んでいるところを作ったら、さぞかし三島にウケるだろう、と思っていて、三島本人にすでにやられていたことを知った時の驚きは、〝やっぱりな〟という気分と共に忘れられない。その後三島の孫が高校を卒業したら出版される、などの噂を耳にしてはタイミングの天才、篠山紀信の影に怯えながら、制作を急いだ。寝床に本を並べ寝心地を悪くし、睡眠時間を削る方法を考えたのはこのためであった。結局は出版される可能性がない事は今は判っている。三島の願ったタイミングで出なかった以上、封印されたままの方が三島にとっても良いと今では思っている。 一方私の場合は作中描かれたり、言及したり、そこから発想した死に方に限っているが、個展で描けなかった唐獅子牡丹を背負った三島も制作出来たし、オンデマンドで小冊子にでも出来たら、なんてここでも書いていたので、来年やり残した新作と共に個展ができるとなればこんな嬉しいことはない。

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旧HP

『石塚公昭 幻想写真展 生き続ける作家た18年7/25~9/2 リコーイメージングスクエア銀座ギャラリーA.W.Pyoutubeこ
2016年『深川の人形作家 石塚公昭の世界』 youtube  

 『タウン誌深川』“明日できること今日はせず”連載12回『大つごもり 樋口一葉



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