明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



それにしても、部屋の片付けを嫌々やっているせいであろう、なかなか日が進まない。なんて長い一月であろう。それでもさすがに先が見えて来たので、あろうことか楽しく感じる一瞬もある。ボクサーがパンチを食らった感じか。 古い薄くグリーンがかった焼酎グラスが出てきた。これは太宰治に使う事にしよう。横に酌婦をはべらせ、だらしない感じにしたい。現在はともかく、昔の作家の肖像写真は、作家とカメラマンとの力関係がどうしても鼻につく。先生を撮らせて頂いている感が拭えず。その点私の場合、いかに森鴎外であろうと、ちょっとトイレに行くから、そこで待っておれ。何ならついでに飲みに行ってくるぞよ、と。 鴎外といえば、制作する事になった時、私がやるからにはただ文豪にするのは芸がない。そこで陸軍医総監の派手なベルサイユの薔薇みたいな礼服にしたら面白いのではないか。脚気論争が有名だが、脚気菌の存在を信じた鴎外が白米食を止めなかったせいで兵隊が随分死んでおり、死ぬまで鴎外は認めなかった。ビタミンはまだ発見されてはいなかったが。 ところが軍の礼服はよくできていて、結局偉くなってしまった。白い大きな羽根飾りの付いた礼帽をあの顔にかぶせれば目的を達したかもしれないが、せっかく作った頭の形が隠れる事が我慢出来ず。つまり自分が作ったが故の欠点が出てしまった。これが一介のカメラマンだったら「閣下お帽子もお願い致します」。といっただろう。

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『石塚公昭 幻想写真展 生き続ける作家た18年7/25~9/2 リコーイメージングスクエア銀座ギャラリーA.W.Pyoutub
2016年『深川の人形作家 石塚公昭の世界』 youtube  

 ※『タウン誌深川』“明日できること今日はせず”連載12回『大つごもり 樋口一葉



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