明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



ここまで寒山拾得、寒山拾得と連呼してしまって良いのであろうか、新たなことというには、寒山拾得はなかなかハードルは高い。昔は友情を持って止めてくれる友人がいたものだが。 今回出品しているが、豊干がいつも乗っている虎を、まだ虎を見たことがなかった日本の絵師の虎にするため近所のトラ猫を撮影して虎にする試みはすでに成功しているし、松尾芭蕉は、これは豊干だ、と私がいえば豊干で通るだろう。先日書いたように、すでに寒山の住まう岩窟も作れそうである。となると仕込みはかなり済んでいると言えそうである。 今回あまりにマイナーで、出品しなかった船の挨拶という戯曲がある。ある海上保安庁の職員が、一人灯台守をしている。毎日汝の安全なる航行を祈るという国際信号旗を揚げている。そこへ突如怪しい密航船が現れ銃撃を受ける。日々日常に飽きていた男はその銃弾を待ち望んでいたかのように感謝して死ぬ。実に三島らしい作品である。幼い頃、家に突然神輿の集団が乱入し、庭を踏み荒らしていったエピソードにも、凶事を待ち望む三島の心理が現れている。現実には密航船も神輿の集団も現れぬまま、市ヶ谷のクライマックスを迎えた。何でこんな話になってしまったか、というと、寒山拾得に気が行っていても、何処かでそれを踏み荒らしてしまうような神輿の集団、一発の銃弾で粉砕してしまうような密航船などの禍事、凶事ならぬ新趣向が降って来はしないだろうか、と何処かで待ち望む自分もいるのである。

汝の安航を祈る 船への挨拶より

6/7まで延長





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