明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
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背なで泣いてる唐獅子牡丹
三島由紀夫
/
2020-05-16
思い残すことがない、というのは思っていた以上にすがすがしいものである。サーカスという作品の構想を練っていた時期があったが、空中ブランコ乗りの少女役が得られないままに終った。しかし椿説弓張月や、最終カット、とずっと考えていた市ヶ谷駐屯地の事件現場の三島が最後に観たであろう窓外に水平線、そこへ日輪が昇る場面も完成し、すっかり溜飲を下げることができた。そう思うと過去のジャズ、ブルースシリーズも初出版となった江戸川乱歩も、やり尽くした感はない。昔、パワー不足で使わなくなったパソコンを久しぶりに開けてみたら、江戸川乱歩の出版に向け、青銅の魔人、パノラマ島奇譚その他、途中まで手掛け完成に至らなかったデータが見つかり、まるで借金とりに追われ、慌てて夜逃げしたかのようなであった。そう考えると、開催中の椿説男の死はやり尽くした感に満たされている。今回DM、ポスターになった三島を眺めると、かつての任侠映画ではないが、我慢に我慢を重ね、堪忍袋の緒が切れて討ち入りに至り、背なで泣いてる唐獅子牡丹。それというのも、自粛自粛の世の中で、構うことネェやってしまいな!という、ふげん社あってのことである。人は来ないだろうが、見ている人は見ている、との飯沢耕太郎さんからのメールも染みる。 私の創作行為とは、頭の中のイメージを可視化し、やっぱり在ったと確認する行為であり、世界がどうあろうと、自分次第でそれだけは遂げることができる。三島には決行が似合うといったのも、まんざら冗談ではないのであった。
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