寒山拾得に関しては順調に金魚を眺めており、何の問題も差し障りもなく、ただ金魚を眺め暮らすという試みに関しては成功しているといえよう。一方、芭蕉記念館の芭蕉庵は、当初私の芭蕉像が、あたかも庵に住まうが如くに、と構想を描いていたが、そうなると少々大き過ぎる。そのままではベランダからでないと家を出ないであろう。またかたわらに芭蕉の樹はもちろん、出来れば古池も欲しい。 そもそも空間を把握する能力に問題があり、何十回も行って来た個展会場の飾り付けはすべてお任せしてしまい、一度も独力でやったことがない身としては、会場の事情なども考慮しなくてはならない。半分にカットすることも考えた。いっそ実際の8分の1くらいならどうだろう。芭蕉の樹も古池も当然オーケーである。しかしそうなると、芭蕉庵にて句作に思いを馳せる芭蕉を配するために座像として制作した芭蕉像が飾れない。 昔、デイスコ用に、人間大の人形を作ったことがあるが、頭部の制作時間は大きかろうと、といつもとたいして変わらなかった。だが逆に小さくとなると話が違ってくる。手のひらに収まるというのと、私の込めたいことを込めるためにはどうしてもいつものサイズは必要なのである。 ところが本日、3Dプリンターで小さく出力する、というのを思い付いた。1997 年に、 初の作家シリーズの個展を開催したおりに、ある人物が、立体をデータとして取り込める機械が日本に一台あり、それでスキャンして映像としてその時展示していた作家を動かしてみたいといった。その時の私はというと、ワープロすら触ったことがなく、スキヤニングという言葉が使われたかどうかも定かではないが、意味も判らず相手にしなかった。もっともその当時のCG映像はたいした物ではなく、余計なことをしないで良かった、と思ったものだが。今だったらまず、ロバート・ジョンソン、葛飾北斎、松尾芭蕉を動かしてみたい。
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